日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC04] 地球温暖化防⽌と地学(CO2地中貯留・有効利⽤、地球⼯学)

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:徂徠 正夫(国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、薛 自求(公益財団法人 地球環境産業技術研究機構)、愛知 正温(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、今野 義浩(The University of Tokyo, Japan)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[HSC04-P07] 苦鉄質岩・超苦鉄質岩および水酸化マグネシウムを用いたCO2固定

*西木 悠人1徂徠 正夫1西山 直毅1 (1.国立研究開発法人産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)

キーワード:苦鉄質岩、地化学トラップ、岩石風化促進

苦鉄質岩・超苦鉄質岩へのCO2固定は,地化学トラップに優れているという点で,近年関心がよりいっそう高まっている。玄武岩層におけるCO2回収・貯留(CCS)の実証実験(アイスランドCarbFixプロジェクトや米国Wallula玄武岩プロジェクト)では,数年規模で炭酸塩鉱物の形成が顕著に確認されている。また,粉砕した苦鉄質岩・超苦鉄質岩の耕作地等への散布によって風化プロセスを促進する「岩石風化促進(ERW)」としてのネガティブエミッション技術の開発は,欧州を中心として世界的にまさに始まった段階である。日本は,苦鉄質岩や超苦鉄質岩の存在量が多くそのバリエーションも多彩であることから,諸外国と比べて地質学的に優位であると期待されているため,国内においても苦鉄質岩・超苦鉄質岩を用いたCO2固定の実現性を検証することが目下必要とされている。

本研究では国内の様々な岩石試料を扱った。苦鉄質岩として,玄武岩(壱岐,見島,佐渡,北海道),超苦鉄質岩として,かんらん岩(北海道)と蛇紋岩(北海道)を入手し,CCSやERWを想定した実験を行った。苦鉄質岩や超苦鉄質岩はMgの含有量が多くそれがCO2鉱物化に寄与することも考えられるため,Mgの挙動をより明確に理解するために,Mgを含有する代表的な物質として水酸化マグネシウム(または酸化マグネシウム)も用意した。

CCSにおける地下環境を想定し,上記の試料と水を用いて(水の質量÷試料の質量 = 10),40℃および60℃,CO2圧力10 MPaの条件のもと反応実験を実施した。試料の溶解に伴い,溶液からはMg2+などの溶存種を確認した。Mg炭酸塩鉱物の形成は容易には起こらず,形成が見られる場合でもネスケホナイト(MgCO3·3H2O)等の含水相がはじめに沈殿し,反応時間の進行とともにマグネサイト(MgCO3)に徐々に相変化していくことが示唆された。

一方,ERWを想定した実験としては,産総研つくば第七事業所の屋上に試料を設置し,岩石風化過程のモニタリング試験を開始した。6か月間のモニタリング結果から,岩石の風化反応を実際に観測することができた。雨水と比べて,岩石を通過した水はpHが高く,Mg2+などの溶存種の濃度も高かった。本研究で扱った岩石試料の中では,蛇紋岩が最も反応性が良く,それは蛇紋岩中の水酸化マグネシウム鉱物(ブルーサイト)の溶解に起因していると考えられる。

以上の実験を通して,CO2–水–岩石相互作用における,苦鉄質岩や超苦鉄質岩の反応性を議論することができた。苦鉄質岩や超苦鉄質岩は,鉱物組成や化学組成の観点から数多くのバリエーションがあるため,今後は他の種類の岩石試料も入手し,同様に実験を行っていく予定である。