日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT15] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、大手 信人(京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)、座長:大手 信人(京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)

09:45 〜 10:00

[HTT15-04] ICP-MSを用いた花崗岩風化の化学的特徴の比較検討

*川越 清樹1、日下部 裕貴1、藪崎 志穂2 (1.福島大学共生システム理工学類、2.総合地球環境学研究所)

キーワード:ICP-MS、花崗岩、斜面崩壊、風化

近年,気候変動により日本各地で降水量の観測史上最大の更新が相次ぎ,洪水や土砂生産などの現象に係る甚大な災害が頻発している.過大な土砂生産の現象は,斜面崩壊により発生する.斜面崩壊は,降水だけでなく,地形,地質風化により活発化する.そのため,土砂生産のリスクを求めるためには,水文量を考慮するだけでなく,地形,地質の条件も検討しなければならない.この研究では,地中状態で可視化しにくい地質の風化状態を化学成分で定量化することに取り組んだ.なお,化学成分は,地質分布領域より基底流出された河川水のサンプルを分析することで求められた.化学成分量は,ICP-MSを用いて多元素の濃度を求め,水文量を当てはめることで導出された.包括的な地質状態での風化度の導出が必要だが,岩組成が明瞭で斜面崩壊実績の多い花崗岩を対象に風化度の導出を試みた.
 研究より得られた知見として,阿武隈高地(宮城県,福島県)を対象とした場合,花崗岩風化過程において溶出する長石由来のCa,黒雲母由来のMgの流出量が斜面崩壊に強い相関をもつことが明らかにされた.そのため,化学成分の同定を行うことで風化の寄与度を把握できる可能性を得ている.ただし,これらの知見は,特定地域の結果である.普遍的な結果を求めるため,秋田県,長野県等の花崗岩地帯に対象を拡張した結果のサンプル資料を用いて比較検討した結果を報告する.