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[HTT15-06] 機械学習によるREEパターン識別を用いた金属トレーサビリティ技術 : タングステン鉱物から原材料まで
キーワード:トレーサビリティ、機械学習
トレーサビリティとは製品について原材料の調達から生産、消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることである。金属材料のトレーサビリティは、金属製品の品質、安全性、持続可能性の向上に貢献するが、一般的に、一次採掘の鉱山と最終生産の現場は離れているため、サプライチェーンを追跡することは困難である。違法採掘はその典型例で、環境破壊や人権侵害を引き起こしている。そのため、精鉱のトレーサビリティを確保するための鉱物資源と製品の識別方法が必要である。本研究では、原産地が限定される金属材料であるタングステンに着目し、原産地を特定する機械学習を活用した新たな手法の検証を行なった。
トレーサビリティ技術を確立するために、一次試料であるタングステン含有鉱物と最終製品であるタングステンカーバイド(WC)に含まれる希土類元素のパターンを分析した。一次試料として、Scheelite:CaWO4(日本:喜和田鉱山、伊達永井鉱山、甲武信鉱山、鐘打鉱山;中国:雪宝頂鉱山;アメリカ:Merrill Prospect)とWolframite : (Fe,Mn)WO4(日本:明延鉱山)の7試料を採取した。最終製品として、異なるメーカーの3つのWCサンプルを用いた。試料中のレアアースは、タングステン含有鉱物についてはLA-ICP-MSで、95%H2O2および5%王水で溶解し、WC試料についてはICP-MSで測定した[DM1] 。タングステン鉱物を識別するために、XRFを用いて元素マッピングを行ない、サンプルごとに5点測定した。得られたレアアースパターンについて機械学習の中の二つの次元圧縮法(PCA、UMAP)を用いて2次元上で識別した。データセットは、レアアースパターンで識別するため各サンプルのランタノイドとイットリウムの計15の希土類元素のそれぞれの比(計105)を用いた。
すべての試料のレアアースパターンはOdd Harkinsの法則に従った。喜和田鉱山、鐘打鉱山、伊達永井鉱山のサンプルでEu値が高くなっている。これは、Euは他の希土類元素と異なり、三価(Eu3+)のみならず還元的な環境では2価となり、他の希土類元素と異なる挙動をするためだと考えられる。Merrill Prospectのサンプルのみ同じサンプル内の測定点ごとに異なるレアアースパターンを示した。明延鉱山のサンプルは濃度において、測定点ごとに大きな差(10,000倍程)が生じたがレアアースパターンは測定点ごとに類似していた。Merrill Prospect、伊達永井鉱山、喜和田鉱山、甲武信鉱山の鉱床タイプはスカルン鉱床で鉱物もScheeliteで同一だが、異なるレアアースパターンを示した。また、伊達永井鉱山はスカルン鉱床、雪宝頂鉱山はペグマタイト鉱床であったがレアアースパターンは類似していた。以上より、レアアースパターンは鉱床タイプや鉱物に依存しないことがわかった。
得られたレアアースパターンに対してPCAを行なった。PCAの結果 (fig.1)について、第2主成分までで累積寄与率が約80%ほどであったため、第1主成分と第2主成分でPCAの結果をPC1、PC2の二次元上でプロットした。7つのタングステン鉱石のうち6つはある程度まとまったが、Merrill Prospectの試料のみ散らばったし。3種類のWCは他の産地のサンプルと同じ場所にはならなかった。PC1が同様でPC2のみが離れている雪宝頂鉱山と伊達永井鉱山のレアアースパターンを比較するとEuとSm、Gdの比率が異なっていた。一方で、PC2が同様でPC1のみが離れている喜和田鉱山と伊達永井鉱山のレアアースパターンを比較すると、喜和田鉱山では重希土類元素の割合が高くなっていったが、伊達永井鉱山では低くなっており、重希土類元素の挙動が影響していると考えられる。
PCAの結果ではサンプルごとに明瞭に分類出来なかったために、分類することに特化したUMAPを用いた解析を行なった。UMAPによる次元圧縮された結果をみるとPCA同様、Merrill Prospect以外の6サンプルはクラスターを形成し、3種類のWCも1カ所にまとまった。UMAPの結果はPCAよりもはっきりとクラスター分け出来ており、伊達永井鉱山、雪宝頂鉱山とその他サンプルで大きく2分していた。ここで、UMAPは、グラフ上で距離が最も遠い要素同士は最も要素の異なるサンプルといえるので、最も距離のあった喜和田鉱山と伊達永井鉱山のレアアースパターンから重希土類元素の割合が最もUMAPの因子として働いていることが考えられる。
本研究では、鉱物に含まれるレアアースパターンについて機械学習を用いることで、産出地ごとに識別出来ることがわかった。これは鉱物の起源を特定し、トレーサビリティに使える。
トレーサビリティ技術を確立するために、一次試料であるタングステン含有鉱物と最終製品であるタングステンカーバイド(WC)に含まれる希土類元素のパターンを分析した。一次試料として、Scheelite:CaWO4(日本:喜和田鉱山、伊達永井鉱山、甲武信鉱山、鐘打鉱山;中国:雪宝頂鉱山;アメリカ:Merrill Prospect)とWolframite : (Fe,Mn)WO4(日本:明延鉱山)の7試料を採取した。最終製品として、異なるメーカーの3つのWCサンプルを用いた。試料中のレアアースは、タングステン含有鉱物についてはLA-ICP-MSで、95%H2O2および5%王水で溶解し、WC試料についてはICP-MSで測定した[DM1] 。タングステン鉱物を識別するために、XRFを用いて元素マッピングを行ない、サンプルごとに5点測定した。得られたレアアースパターンについて機械学習の中の二つの次元圧縮法(PCA、UMAP)を用いて2次元上で識別した。データセットは、レアアースパターンで識別するため各サンプルのランタノイドとイットリウムの計15の希土類元素のそれぞれの比(計105)を用いた。
すべての試料のレアアースパターンはOdd Harkinsの法則に従った。喜和田鉱山、鐘打鉱山、伊達永井鉱山のサンプルでEu値が高くなっている。これは、Euは他の希土類元素と異なり、三価(Eu3+)のみならず還元的な環境では2価となり、他の希土類元素と異なる挙動をするためだと考えられる。Merrill Prospectのサンプルのみ同じサンプル内の測定点ごとに異なるレアアースパターンを示した。明延鉱山のサンプルは濃度において、測定点ごとに大きな差(10,000倍程)が生じたがレアアースパターンは測定点ごとに類似していた。Merrill Prospect、伊達永井鉱山、喜和田鉱山、甲武信鉱山の鉱床タイプはスカルン鉱床で鉱物もScheeliteで同一だが、異なるレアアースパターンを示した。また、伊達永井鉱山はスカルン鉱床、雪宝頂鉱山はペグマタイト鉱床であったがレアアースパターンは類似していた。以上より、レアアースパターンは鉱床タイプや鉱物に依存しないことがわかった。
得られたレアアースパターンに対してPCAを行なった。PCAの結果 (fig.1)について、第2主成分までで累積寄与率が約80%ほどであったため、第1主成分と第2主成分でPCAの結果をPC1、PC2の二次元上でプロットした。7つのタングステン鉱石のうち6つはある程度まとまったが、Merrill Prospectの試料のみ散らばったし。3種類のWCは他の産地のサンプルと同じ場所にはならなかった。PC1が同様でPC2のみが離れている雪宝頂鉱山と伊達永井鉱山のレアアースパターンを比較するとEuとSm、Gdの比率が異なっていた。一方で、PC2が同様でPC1のみが離れている喜和田鉱山と伊達永井鉱山のレアアースパターンを比較すると、喜和田鉱山では重希土類元素の割合が高くなっていったが、伊達永井鉱山では低くなっており、重希土類元素の挙動が影響していると考えられる。
PCAの結果ではサンプルごとに明瞭に分類出来なかったために、分類することに特化したUMAPを用いた解析を行なった。UMAPによる次元圧縮された結果をみるとPCA同様、Merrill Prospect以外の6サンプルはクラスターを形成し、3種類のWCも1カ所にまとまった。UMAPの結果はPCAよりもはっきりとクラスター分け出来ており、伊達永井鉱山、雪宝頂鉱山とその他サンプルで大きく2分していた。ここで、UMAPは、グラフ上で距離が最も遠い要素同士は最も要素の異なるサンプルといえるので、最も距離のあった喜和田鉱山と伊達永井鉱山のレアアースパターンから重希土類元素の割合が最もUMAPの因子として働いていることが考えられる。
本研究では、鉱物に含まれるレアアースパターンについて機械学習を用いることで、産出地ごとに識別出来ることがわかった。これは鉱物の起源を特定し、トレーサビリティに使える。