日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT15] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、大手 信人(京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)、座長:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)

11:15 〜 11:30

[HTT15-08] バルク・アミノ酸安定同位体比にもとづいた西部北太平洋におけるマイワシ・サバ類の摂餌生態の年変動要因の解析

大野 耀介1、*梅澤 有1、奥西 武2、由上 龍嗣2、上村 泰洋2、由水 千景3陀安 一郎3 (1.東京農工大学、2.水産研究・教育機構 水産資源研究所、3.総合地球環境学研究所)

キーワード:マイワシ、サバ、同位体比年変動、アミノ酸窒素安定同位体比、摂餌生態、栄養段階

黒潮―親潮移行域で捕獲されたマイワシ・サバ類の0・1歳魚以上についてその食性や餌起源の年変動を調べるために、バルクの炭素・窒素安定同位体比分析(δ13C・δ15N)を行うとともに、成魚である1歳魚以上に対しては、アミノ酸のδ15Nの分析をおこなった。δ13C、δ15Nは0歳魚ではマイワシとサバ類での差が小さく、年変動の傾向も類似していることから、同じ食物網に依存していることが示唆された。一方で、1歳魚以上ではδ13Cとδ15Nの差が大きく、異なる年変動を示すことや、アミノ酸のδ15Nから推定された栄養段階や、窒素源の指標となるフェニルアラニン(Phe)のδ15Nがサバ類の方が高いことから、1歳魚以上ではマイワシとサバ類が異なる食物網に依存することがある可能性が示された。δ15Nの変動はどちらもδ15NPheの変動と相関し、マイワシは移行域への親潮の南下の強弱による食物網構造の違いによって説明できたのに対して、サバ類は、個体の成長や北上回遊の影響も大きいことが示唆された。これに加え、近年のマイワシ・サバ類の個体密度の増加による餌競合や共食いがサバ類のTP に反映された。このように同所的に漁獲される両魚種であるが、成魚では回遊履歴や深度、摂餌形態の違いによる餌資源の変動要因が異なることが分かった。マイワシ・サバ類の成魚の餌環境の違いは、栄養状態や産卵に異なる影響を与え、両魚種の資源量の変動の違いにも寄与する可能性がある。