日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT15] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2023年5月23日(火) 10:45 〜 12:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、大手 信人(京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)、座長:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)

11:30 〜 11:45

[HTT15-09] 岡山県津雲貝塚より出土した古人骨の炭素・窒素同位体分析

*日下 宗一郎1、丸山 真史1 (1.東海大学)

キーワード:縄文、人骨

岡山県笠岡市に位置する津雲貝塚からは,縄文時代中期から晩期の多数の古人骨が出土している。大正時代に発掘調査が行われて,日本で初めて多数の縄文時代の古人骨が発見されたことで有名な遺跡である。埋葬姿勢や副葬品,抜歯風習などの研究によって,縄文時代の社会構造の復元に大きな役割を果たしてきた。これまでに,京都大学所蔵の資料の炭素・窒素同位体分析や放射性炭素年代測定によって,食性や年代が明らかとされてきた。今回,これまで詳細が未報告であった大阪大学所蔵の資料を調査し,炭素・窒素同位体分析を行うことで,食性の復元を行うことを目的とした。資料は,津雲貝塚から発掘された古人骨資料の合計47点である。性別や年齢を判別することができた資料を選定し,骨コラーゲンの抽出を行い,炭素・窒素同位体比を測定した。その結果,大きな同位体比の変動を示し,海産資源と陸上資源を組み合わせた食性と,その個人差が生じていたことが明らかとなった。これまでの京都大学所蔵の資料と比較すると,全体的に窒素同位体比が高い傾向にあった。先行研究では,山陽地域において,縄文時代の中期から晩期にかけて,窒素同位体比が下がる傾向にあることが知られていた。それを考え合わせると,大阪大学資料は中期から後期の時期に帰属している可能性が示唆された。津雲貝塚は,縄文時代の中期から晩期にかけて多数の古人骨が埋葬されていたことが考えられるが,時期差の検討を行うためには放射性炭素年代測定を行う必要がある。