日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT15] 環境トレーサビリティ手法の開発と適用

2023年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (3) (オンラインポスター)

コンビーナ:陀安 一郎(総合地球環境学研究所)、SHIN Ki-Cheol(総合地球環境学研究所)、大手 信人(京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[HTT15-P07] 安定同位体比分析を用いたニホンザル野生群の食性解析

*舟川 一穂1木庭 啓介1 (1.京都大学生態学研究センター)

キーワード:安定同位体比、食性、ニホンザル

ニホンザル幸島群はほぼ全ての個体が識別され、年齢や優劣関係などの社会的属性が記録されてきた個体群である。本研究ではこのニホンザル幸島群に対して、個体および群れレベルで食性解析を行い、これら社会的属性が食性に与える影響を定量的に示すことを目的として行った。
用いた手法は炭素・窒素・硫黄安定同位体比分析であり、対象とした個体は幸島個体群の主群・マキ群という二つの群れに属する個体およびはぐれ個体を含めた38個体である。分析の結果、3つの安定同位体比すべてで他群と比較すると非常に大きな変動が見られた。また特に硫黄同位体比に関しては個体間だけでなく群れ間にも明確な差異が示された。
さらにこの個体群が摂取している食物資源を森林由来・海産由来・餌付け(人間)由来と大きく3つに分類し、サルの同位体比の変動に対して同位体混合モデルであるMixSIARを用いて解析を行った。その結果これらの変動は各個体の性別と所属している群れの影響を受けていることが明らかになった。具体的には海産由来の食物資源への選好性には明確な雌雄差が存在し、両群ともにオス個体の方がメス個体よりも大きく、逆に人間由来の食物資源に対してはメス個体の方がオス個体よりも選好性が高かった。
また一方でこれまで重要な食物資源と見なされてこなかった海産由来の食物資源が、どの個体においても摂取食物の1∼2割程度の割合を占め、幸島群の食性の特異性も明らかになった。