日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT16] 地理情報システムと地図・空間表現

2023年5月24日(水) 15:30 〜 16:45 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)、座長:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、田中 一成(大阪工業大学工学部都市デザイン工学科)、中村 和彦(東京大学)

15:30 〜 15:45

[HTT16-01] RとGISを使った神戸市域における風の地球情報解析

★招待講演

*山川 純次1 (1.岡山大学学術研究院自然科学学域)

キーワード:クリギング、風分布モデル、気圧分布モデル、気温分布モデル、ウインドシアー

神戸市域は海陸風や山谷風が最高約1,000メートルの六甲山脈地形と複雑に相互作用する地域であり,また瀬戸内海に面するため気圧や気温も複雑に変動する。このため,この地域に形成される風は複雑な動きを示すケースが多い。本研究ではオープンデータのみを利用し,2022年5月10日11:00を対象として,神戸市域に形成された風ベクトル場と気圧および気温の分布について地球情報解析により検討を行った。

今回対象とした地域は神戸市で,気象観測データは気象庁により公開されている2022年5月10日のデータ(1時間値)を用いた。地球情報解析にはGNU R (R core team, 2023) とクリギング法のパッケージであるgstat (Pebsma, 2004)およびQGIS用クリギング法のプラグインであるSmart-Map (Pereira, 2022)を使用した。推定グリッドは三次メッシュコード(総務省統計局, 2022)を使用した。地形データは国土交通省国土地理院基盤地質情報数値標高モデル(10メートルメッシュ)を使用した。行政境界データは国土交通省国土数値情報行政区域データ(平成22年度作成)を使用した。海岸線データは国土交通省国土地理院地球地図日本を使用した。地球情報解析にはQGIS (QGIS Developing Team, 2023)を使用した。等値線作成にはContourプラグイン(QGIS Development Team, 2022)を使用した。地図表現にはQGIS (QGIS Development team, 2022)を使用した。

風と気圧および気温観測データの空間依存性をバリオグラムにより推定し,クリギング法により神戸市全域に関する風と気圧および気温の分布モデルおよびその分散モデルを得た。また気圧および気温の分布モデルの等値線をContourプラグインにより作成し地図表現した。これらを用いて神戸市域での風分布と気圧および気温の分布との関係について定性的検討を行なった。その結果,対象時刻の神戸地方気象台付近では北に向かって層厚が増加したため東風が形成されたと推定された。またウインドシアーの方向から暖気移流であったと推定された。

Rを使ったクリギングとGISを使った風分布モデルおよび気圧分布と温度分布の地図表現により,観測点数が限定されていても風ベクトル場とウインドシアーの定性的な議論が可能ではないかと考えられた。他の地域に形成される風ベクトル場を用いた,今回の手法の有効性の検討は今後の課題である。