日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT17] 環境リモートセンシング

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (13) (オンラインポスター)

コンビーナ:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、島崎 彦人(独立行政法人国立高等専門学校機構 木更津工業高等専門学校)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[HTT17-P10] 低照射密度LiDARと衛星リモートセンシングを用いた森林密度の広域推定

*橋本 朝陽1、猪越 翔大2、邱 湞瑋2恩田 裕一3五味 高志4 (1.筑波大学大学院地球科学学位プログラム、2.東京農工大学農学府 国際環境農学専攻、3.筑波大学アイソトープ環境動態研究センター、4.名古屋大学生命農学研究科)


キーワード:衛星リモートセンシング、森林密度、LiDAR

適切に管理されていない日本の人工林は、樹木の生育密度が非常に高い。そのため、葉や幹から直接蒸発する遮断蒸発量が増加するほか、蒸散量も健康な森林に比べて増加する。これらは地下水涵養量の減少を引き起こし、利用可能な水量を減少させる。また、樹冠が閉鎖しているため、日射が林床に届きにくく、林床植生が生育しにくい。そのため、土壌における雨水の浸透能が低下し、表面流が発生しやすくなり、肥沃な土壌の流亡が生じる。適切な水循環と肥沃な土壌を維持するためには、森林の混み具合を把握した上で、間伐などの適切な管理を行うことが必要である。

適切な森林密度は樹種・樹高に依存するため、日本では森林の混み具合を評価するために相対収量指数(Ry)が用いられている。この指数は樹種・樹高・立木密度によって決まり、0から1の間で表される。おおよそRyが0.6以下であれば疎密林、0.8以上であれば過密林とされている。Ryを広域で推定することができれば、森林管理計画に大きく資すると考えられる。LiDARデータは、優れた垂直分解能を有するため、森林構造の把握に広く利用されている。日本では低照射密度LiDARデータ(1点/m2)が広く整備されているが、このデータのみで森林密度を求めることは困難である。衛星リモートセンシングでは、植生の活性度や樹冠密度に敏感な植生指標の開発や、樹冠密度の違いによる地表温度の違いを利用して、荒廃人工林を判別することが試みられている。これらとLiDARデータと併用することで、より高い精度で森林密度を推定できる可能性がある。

本研究では、日本のスギ・ヒノキ人工林を対象に、LiDARデータと衛星リモートセンシングを用いて、森林管理に必要な情報であるRyを推定する方法を開発した。
密度が高い森林は、通常の森林に比べて相対的に樹冠温度が高く、樹冠が薄いという先行研究から、Landsat8を利用し、表面温度とLAIを算出した。地形による表面温度の差異、LAIの樹高依存性を考慮することで、頑強性の高い、新たなRy推定指標を作成した。

推定されたRyは、4点/m2のLiDARデータから得られたRyと高い相関があった(r = 0.62, n = 20001)。本研究の結果は、日本の人工林における水循環を推定、また土壌を保全するための重要な情報を提供することができる。また、本手法は世界中の様々な針葉樹林に適用可能であり、全球規模の水循環モデルの高度化に貢献することが期待される。