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[MAG34-P04] 福島県の森林における降雨データを用いた推定手法による土壌水分量と空間線量率の変化の解明
キーワード:空間線量率、遮蔽効果、実効雨量、ヒステリシス
2011年の福島第一原子力発電所事故により放出・沈着した放射性核種は、福島県内の森林で空間線量率の上昇を引き起こした。一般的に空間線量率は降雨時に増加することが報告されているが、福島県の森林では減少することが分かっている。これは、土壌水分の増加により土壌から放出される放射性セシウムが遮蔽されるためである。過去に放射性核種の影響がある森林内での土壌水分の遮蔽効果を述べた研究は少なく、土壌の水分変化による影響を除外した空間線量率の評価を行うためには、土壌水分の変化による空間線量率の変化を捉える必要がある。本研究の目的は、土壌水分データがない場合でも降雨による空間線量率の変化を推定する方法を開発することである。そのため、福島県の森林における土壌水分と空間線量率を調査するだけでなく、降雨量データから実効雨量を算出し、簡易的に土壌水分および空間線量率を推定する手法を検討した。福島県の森林では、土壌含水率と空間線量率の相関は極めて高く、土壌含水率の変化が空間線量率の値に大きく影響していることが判明した。実効雨量から森林内の土壌水分を推定する際には、半減期を組み合わせた実効雨量を用いること、土壌の吸水時と排水時では異なる動態を示すヒステリシスが存在すること、乾燥した土壌では撥水性の存在によって土壌水分が上昇しないことを踏まえる必要があることが分かった。現地での測定結果によると、無降雨期間が続いた後の降雨発生時、初期段階では土壌含水率が上昇しない場合があり、撥水性の存在が示唆された。この場合の特徴として、ごくわずかな降雨量に加えて降雨開始時の土壌含水率が低い傾向であった。この時の空間線量率はほとんど変わらなかった。なお降雨時間が継続した場合には、降雨開始時の土壌含水率にかかわらず撥水性が消滅するため、空間線量率の低下がみられた。降雨量データを用いた空間線量率の推定をするためには、より土壌水分の動態を踏まえた実効雨量からの土壌含水率の推定が重要となる。その中でも、ヒステリシスや撥水性を捉えることが土壌含水率の推定には必要になる。