日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI28] 地球掘削科学

2023年5月24日(水) 15:30 〜 16:45 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:針金 由美子(産業技術総合研究所)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、濱田 洋平(独立行政法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、座長:針金 由美子(産業技術総合研究所)、黒田 潤一郎(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門)、濱田 洋平(独立行政法人海洋研究開発機構 高知コア研究所)、藤原 治(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)


16:00 〜 16:15

[MGI28-03] IODP Expedition 369: オーストラリア南西沖メンテーレ海盆における白亜紀ー古第三紀境界のオスミウム同位体層序と白金族元素組成

*太田 映1黒田 潤一郎1、Maria Tejada2石川 晃3鈴木 勝彦2大河内 直彦2 (1.東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門、2.国立研究開発法人海洋研究開発機構 、3.東京工業大学理学院地球惑星科学系)

キーワード:オスミウム同位体、K-Pg境界、メンテーレ海盆、IODP Exp.369

2017年にInternational Ocean Discovery Program (IODP) Exp. 369が実施され、大オーストラリア湾とオーストラリア南西沖メンテーレ海盆でコアが掘削回収された。Exp.369は南半球高緯度地域における白亜紀と新生代の古気候古海洋変動と、中生代のゴンドワナ大陸分裂に伴う火成活動について解明することを目的としていた。本研究では、IODP Exp. 369 Site U1514のコアサンプルを用いて、白金族元素の濃度とオスミウム同位体比の測定を行い、白亜紀―古第三紀境界(K-Pg境界)の地球化学層序学的検討を行った。白金族元素の異常濃集は天体衝突の重要な証拠であり、またオスミウム同位体比(187Os/188Os)のシャープな低下も隕石衝突を示す指標となっている。このように白金族元素の異常濃集とオスミウム同位体比の低下によってK-Pg境界の天体衝突層準を特定し、世界各地のセクションと対比することができる。このサイトはK-Pg大量絶滅をもたらした隕石の衝突地点であるチチュルブクレーターのほぼ対蹠点に位置し、衝突の影響を比較的受けにくい海域の貴重なデータが得られた。
コア369-U1514C-23Rについて、20cm毎(K-Pg境界前後では10cm毎)の解像度で測定したところ、石灰質ナンノ化石層序で決定されたK-Pg境界とRu, Os, Ir の濃度のピークの層準が一致した。また、187Os/188Os値もその層準において最低値187Os/188Os ~0.2)をとる。白金族元素の濃度ピークとOs同位体比の低下は、他地域のK-Pg境界の地球化学的特徴と一致している。CIコンドライトで規格化した白金族元素の相対存在度はほぼフラットなパターンを示し、地球外物質の寄与が高いことを示す。サイトU1514においてK-Pg境界に天体衝突の痕跡が保存されていることを明らかにできた。また、K-Pg境界より下位の層準でマントル由来物質の寄与の増加を示すオスミウム同位体比の低下が認められた。これは、デカン洪水玄武岩の形成や、南東インド洋付近の火成活動を反映している可能性が高く、オスミウムの供給源についてさらに検討する必要がある。