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[MGI29-P05] 日本列島の地質を構成する各岩相の化学組成分布から見る、データの統計的特徴と区分の妥当性
キーワード:地球化学データベース、シームレス地質図、地質区分、対数分布、日本列島の化学的特徴
日本列島内に「どのような地質」が「どのような割合」で分布しているかは、全域の地質図が完備して以降、それぞれの時代における地質研究の動向に応じて、様々に検討されてきた。そして日本列島の地質的、化学的形成過程も各時代における化学分析の動向、および地質発達モデルの構築と改訂を反映しながらすすめられてきた。これらの研究の元となる地質データ及び化学データも研究の進展に伴って多くの情報が蓄積されており、これらのデータを利用するための技術も進展してきた。これらの研究を通した、日本列島の地球化学的な発達プロセスの解析は、今なお進行中の研究課題である。
これまで、原口他(2019年地質学会秋季大会、JpGU-AGU Joint Meeting 2020)で、地質調査所発行のシームレス地質図及び日本国内出版文献収録の地球化学データを収録したデータベース「DODAI」を用い、地質構成要素の化学組成分布の「東西差」に注目して、この差の由来を地質構造発達史と関連させて考察した。さらに原口他(2022年連合大会、地質学会秋季大会)では、地質構成要素の「面積比とデータ分布密度」に注目し、岩相ごとのデータ分布の特徴の違いから分野ごとの化学的研究の動向を考察し、これらの報告を通して、日本列島の地質構成要素の区分と地球化学データの特徴に基づく、日本列島の地球化学組成を考える上での現状と課題を紹介した。本報告では、これらの報告を踏まえて、岩相ごとの「化学組成分布」の「統計的な考え方」に注目する。
地質区分は「火山岩」「深成岩」「堆積岩」「変成岩」の大区分を基にmafic, intermediate, felsic等の細分を、岩石学的記載に基づいて行った。これらの区分内での化学組成分布は、多くの元素で0%, ppmを起点にして、低濃度側に分布のピークがあり、高濃度側に向けて単調にデータ数が減少する分布を示す。統計値を用いてデータ分布を考えるに当たって、歪度、尖度等の統計値は正規分布が基準になっているため、このような単調減少分布では標準的な範囲から数値が大きく外れることが多い。一方、「対数」でデータ分布を見ると、真数では単調減少分布する多くの元素が「正規分布的」な分布を示し、統計な取り扱いが可能となる。また、「分化による元素の濃集」による極めて高濃度の値も、対数を取ることにより一括して扱うことが可能となる。このような対数分布の性質、課題を踏まえ、区分したデータを見ると、多くの岩相、元素で正規分布的なデータ分布を示し、化学的な「グループ」としての意味も持っていると解釈される。その中で一部の岩相、元素でバイモーダルなデータ分布を示すことがあり、特に火山岩において、「アルカリ系列」を反映するアルカリ元素等液相濃集元素の高濃度のグループ化が顕著である。このような「データ分布の歪みをもたらす要素」の統計学的な位置付け等、データ分布から見た「岩相区分の妥当性」「日本列島の構造発達史の中での岩相の位置付け」を考察したい。
シームレス地質図に基づく岩質ごとの面積比算出にあたり、ご協力いただいた産総研・西岡芳晴氏に感謝いたします。
これまで、原口他(2019年地質学会秋季大会、JpGU-AGU Joint Meeting 2020)で、地質調査所発行のシームレス地質図及び日本国内出版文献収録の地球化学データを収録したデータベース「DODAI」を用い、地質構成要素の化学組成分布の「東西差」に注目して、この差の由来を地質構造発達史と関連させて考察した。さらに原口他(2022年連合大会、地質学会秋季大会)では、地質構成要素の「面積比とデータ分布密度」に注目し、岩相ごとのデータ分布の特徴の違いから分野ごとの化学的研究の動向を考察し、これらの報告を通して、日本列島の地質構成要素の区分と地球化学データの特徴に基づく、日本列島の地球化学組成を考える上での現状と課題を紹介した。本報告では、これらの報告を踏まえて、岩相ごとの「化学組成分布」の「統計的な考え方」に注目する。
地質区分は「火山岩」「深成岩」「堆積岩」「変成岩」の大区分を基にmafic, intermediate, felsic等の細分を、岩石学的記載に基づいて行った。これらの区分内での化学組成分布は、多くの元素で0%, ppmを起点にして、低濃度側に分布のピークがあり、高濃度側に向けて単調にデータ数が減少する分布を示す。統計値を用いてデータ分布を考えるに当たって、歪度、尖度等の統計値は正規分布が基準になっているため、このような単調減少分布では標準的な範囲から数値が大きく外れることが多い。一方、「対数」でデータ分布を見ると、真数では単調減少分布する多くの元素が「正規分布的」な分布を示し、統計な取り扱いが可能となる。また、「分化による元素の濃集」による極めて高濃度の値も、対数を取ることにより一括して扱うことが可能となる。このような対数分布の性質、課題を踏まえ、区分したデータを見ると、多くの岩相、元素で正規分布的なデータ分布を示し、化学的な「グループ」としての意味も持っていると解釈される。その中で一部の岩相、元素でバイモーダルなデータ分布を示すことがあり、特に火山岩において、「アルカリ系列」を反映するアルカリ元素等液相濃集元素の高濃度のグループ化が顕著である。このような「データ分布の歪みをもたらす要素」の統計学的な位置付け等、データ分布から見た「岩相区分の妥当性」「日本列島の構造発達史の中での岩相の位置付け」を考察したい。
シームレス地質図に基づく岩質ごとの面積比算出にあたり、ご協力いただいた産総研・西岡芳晴氏に感謝いたします。