10:45 〜 12:15
[MGI30-P06] プレートテクトニクスの再現へ向けて、応力履歴依存粘性を導入したマントル対流の3次元球殻モデル
マントルは対流運動をしているが、それはプレート運動を駆動し、(例えば水や炭素の循環を通じて)地球の表層環境にも大きな影響を与えている。マントル対流の特徴と進化の理解は、地球においてその熱史と地球環境の変遷を理解する上で必要不可欠なピースの一つであるが、その理解のためにはマントル対流に伴うプレート運動を精確に解く事が必要である。我々はプレート運動を精確に取り扱えるマントル対流モデルの構築を目指している。
ところで地球上では、ほぼ同じ応力が掛かっていても、プレートが割れている所とそうでない所が存在している。強い応力が掛かって割れたプレートは、応力が下がっても直ちに固着して元の状態に戻るわけではない。すなわち、プレートの状態は、その瞬間の応力の強さだけで決まるわけではなく、過去に破壊を受けたかどうかという応力履歴に依存している。
我々は応力履歴依存粘性(Ogawa, 2003)を導入した箱型マントル対流モデル(Miyagoshi et al., 2020)を過去に実施した。その結果、プレート境界のみに集中するプレート変形や長期間安定な剛体運動など、地球上のプレート運動の特徴を良く捉えた結果を得ることができた。またその帰結として、海嶺からの距離に応じた地熱流量分布に関して観測結果の理解に有用な結果を得ることが出来た。
箱型モデルでは、プレートが端から端まで沈み込む数億年~十億年程度の振る舞いを見るには良いと思われる。しかしながら海溝の位置がほぼ計算境界で決まってしまう為、地球史(40億年~)に亘るプレート運動の変遷や、沈み込みによる内部構造の変化を見るには不適切である。また対流に影響を与えうる表層と核-マントル境界の面積差も考慮されていない。種々の観測結果などと詳細な比較を行うには、球殻モデルでの計算結果が必要不可欠である。
我々は、応力履歴依存粘性モデルを3次元球殻版に拡張した計算を行っている。鍵となる主なパラメータは、粘性の温度依存性の強さ(ある大きさ以上ないと固いプレートが発達しない)及び応力破壊により無傷の部分に比べてどれだけ粘性率が下がるかの比(プレート運動のレジームに入るには、この値がプレート直下のアセノスフェア比と同等程度になる必要がある)である。どちらにおいても、粘性率コントラストが大きくなるほど、計算が困難になる。
これまでの計算の結果からは、表面とその直下のアセノスフェアの温度の違いによる粘性率比はO(103)程度と、実際の地球にほぼ近いパラメータまで到達している。応力による強い変形を受けている部分は主に低温物質が沈み込む部分で、筋状の変形境界によって表面がいくつかの領域に区分されている。しかしながら、本計算では応力破壊による粘性率低下比が無傷の部分と比較してO(10-2)倍程度であり、まだ剛体的なプレート運動は再現できていない。そのレジームに入るにはさらにこの量を小さくする必要がある。現在の所は weak plate regime(Ogawa 2003)と呼ばれるレジームである。本講演では、本モデルの計算の進捗状況について発表する。
ところで地球上では、ほぼ同じ応力が掛かっていても、プレートが割れている所とそうでない所が存在している。強い応力が掛かって割れたプレートは、応力が下がっても直ちに固着して元の状態に戻るわけではない。すなわち、プレートの状態は、その瞬間の応力の強さだけで決まるわけではなく、過去に破壊を受けたかどうかという応力履歴に依存している。
我々は応力履歴依存粘性(Ogawa, 2003)を導入した箱型マントル対流モデル(Miyagoshi et al., 2020)を過去に実施した。その結果、プレート境界のみに集中するプレート変形や長期間安定な剛体運動など、地球上のプレート運動の特徴を良く捉えた結果を得ることができた。またその帰結として、海嶺からの距離に応じた地熱流量分布に関して観測結果の理解に有用な結果を得ることが出来た。
箱型モデルでは、プレートが端から端まで沈み込む数億年~十億年程度の振る舞いを見るには良いと思われる。しかしながら海溝の位置がほぼ計算境界で決まってしまう為、地球史(40億年~)に亘るプレート運動の変遷や、沈み込みによる内部構造の変化を見るには不適切である。また対流に影響を与えうる表層と核-マントル境界の面積差も考慮されていない。種々の観測結果などと詳細な比較を行うには、球殻モデルでの計算結果が必要不可欠である。
我々は、応力履歴依存粘性モデルを3次元球殻版に拡張した計算を行っている。鍵となる主なパラメータは、粘性の温度依存性の強さ(ある大きさ以上ないと固いプレートが発達しない)及び応力破壊により無傷の部分に比べてどれだけ粘性率が下がるかの比(プレート運動のレジームに入るには、この値がプレート直下のアセノスフェア比と同等程度になる必要がある)である。どちらにおいても、粘性率コントラストが大きくなるほど、計算が困難になる。
これまでの計算の結果からは、表面とその直下のアセノスフェアの温度の違いによる粘性率比はO(103)程度と、実際の地球にほぼ近いパラメータまで到達している。応力による強い変形を受けている部分は主に低温物質が沈み込む部分で、筋状の変形境界によって表面がいくつかの領域に区分されている。しかしながら、本計算では応力破壊による粘性率低下比が無傷の部分と比較してO(10-2)倍程度であり、まだ剛体的なプレート運動は再現できていない。そのレジームに入るにはさらにこの量を小さくする必要がある。現在の所は weak plate regime(Ogawa 2003)と呼ばれるレジームである。本講演では、本モデルの計算の進捗状況について発表する。