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[MIS02-03] 中新世の海水準変動周期と日本海堆積物に記録された短周期古環境変動の関係
キーワード:日本海、中新世、海水準変動、XRFコアスキャナー(ITRAX)、IODP Exp. 346、短周期古気候変動
千年スケールの急激な気候変動は、南北両半球に氷床が発達した第四紀においてよく研究されている。氷期・間氷期サイクルによる海水準変動がそれまでの4万年周期から10万年周期になった時期(約100万年前)以降に千年スケールの短周期気候変動が顕著に見られることが知られており(多田、2012)、これらの急激な気候変動のメカニズムとして北半球氷床の崩壊などが指摘されている(Dansgaard et al., 1993)。
一方、北半球に氷床が存在せず、南極氷床のみが発達した中新世においても、海水準変動は4万年周期と10万年周期の時代がそれぞれ存在していた(Holbourn et al., 2005)。中新世後期にも、第四紀で見られるのと同様な周期を持つ短周期古環境変動が日本海堆積物に記録されていたことが知られているが(Tada, 1999)、そのメカニズムや、海水準変動周期との関係性は明らかにされていない。
日本海は中新世以降、外洋と海水の交換のある海峡が浅い状態が続いているため、その古海洋環境は海水準変動に敏感に応答することが知られている(Itaki, 2016)。また、第四紀において、明暗互層に代表される千年スケールの海洋環境は、大陸へのアジアモンスーンの降水に影響を受けていることが知られている(Tada et al., 1999)。そこで本研究では、中新世後期の寒冷化の時代において、日本海堆積物に見られる数万年周期の海水準変動に沿った古環境変動と、より短周期の変動がどのように関係していたのかを明らかにし、短周期気候変動の発生メカニズムの解明に貢献することを目的とする。
中新世の堆積物試料は、2013年のIODP Exp. 346で日本海から掘削されたU1425地点(水深約2000m)とU1430地点(水深約1000m)のコア試料を用いる(Tada et al., 2015)。U1425地点は約10Maまで、U1430地点は約12Maまでの堆積物が得られており、精密な層序対比が可能な年代では異なる水深での古海洋環境の違いを復元することも可能である(Kurokawa et al., 2019)。
各地点の試料は、高知大学のXRFコアスキャナー(ITRAX)を用いて、2mmまたは1cmの間隔で元素組成分析を行った。また、堆積物に顕著なラミナが見られる区間においては、0.2mm間隔での分析も行った。
その結果、砕屑物組成の変動には数万年スケールの周期が見られ、数万年周期の海水準変動に対応していると考えられることが明らかになった。海洋底層の酸化還元状態も、数万年スケールの海水準変動によって変化していた時期があった。また、短周期の変動を記録しているラミナ堆積物は、生物生産や海洋底層環境の変化などの様々な環境要因を記録していることが明らかになった。発表では、これらの数万年スケールの海水準変動に伴った古海洋変動と、より短周期の変動の関係性について紹介する。
一方、北半球に氷床が存在せず、南極氷床のみが発達した中新世においても、海水準変動は4万年周期と10万年周期の時代がそれぞれ存在していた(Holbourn et al., 2005)。中新世後期にも、第四紀で見られるのと同様な周期を持つ短周期古環境変動が日本海堆積物に記録されていたことが知られているが(Tada, 1999)、そのメカニズムや、海水準変動周期との関係性は明らかにされていない。
日本海は中新世以降、外洋と海水の交換のある海峡が浅い状態が続いているため、その古海洋環境は海水準変動に敏感に応答することが知られている(Itaki, 2016)。また、第四紀において、明暗互層に代表される千年スケールの海洋環境は、大陸へのアジアモンスーンの降水に影響を受けていることが知られている(Tada et al., 1999)。そこで本研究では、中新世後期の寒冷化の時代において、日本海堆積物に見られる数万年周期の海水準変動に沿った古環境変動と、より短周期の変動がどのように関係していたのかを明らかにし、短周期気候変動の発生メカニズムの解明に貢献することを目的とする。
中新世の堆積物試料は、2013年のIODP Exp. 346で日本海から掘削されたU1425地点(水深約2000m)とU1430地点(水深約1000m)のコア試料を用いる(Tada et al., 2015)。U1425地点は約10Maまで、U1430地点は約12Maまでの堆積物が得られており、精密な層序対比が可能な年代では異なる水深での古海洋環境の違いを復元することも可能である(Kurokawa et al., 2019)。
各地点の試料は、高知大学のXRFコアスキャナー(ITRAX)を用いて、2mmまたは1cmの間隔で元素組成分析を行った。また、堆積物に顕著なラミナが見られる区間においては、0.2mm間隔での分析も行った。
その結果、砕屑物組成の変動には数万年スケールの周期が見られ、数万年周期の海水準変動に対応していると考えられることが明らかになった。海洋底層の酸化還元状態も、数万年スケールの海水準変動によって変化していた時期があった。また、短周期の変動を記録しているラミナ堆積物は、生物生産や海洋底層環境の変化などの様々な環境要因を記録していることが明らかになった。発表では、これらの数万年スケールの海水準変動に伴った古海洋変動と、より短周期の変動の関係性について紹介する。