09:15 〜 09:30
[MIS08-02] 約40万年前の温暖期における南大洋の海洋前線と海水温の復元
キーワード:MIS 11、有孔虫
南大洋を特徴付ける南極周極流は,複数の海洋前線(亜南極前線や南極前線など)から構成される.海洋前線は水温や塩分が異なる水塊の境界であり,近年の温暖化に対して南下する傾向が指摘されている.一方,約40万年前の温暖期(間氷期)である海洋酸素同位体ステージ(MIS)11について,全球平均気温が産業革命前+2度の可能性があり,当時の気候状態の解明が求められている.そこで本研究では,MIS 11を記録した南大洋インド洋区の海底堆積物を対象として,浮遊性有孔虫化石から海洋前線の位置や海水温を復元する.
試料採取地点は南大洋インド洋区クロゼ諸島周辺(MD19-3578地点: 南緯46度6分,東経49度8分)であり,現在の亜南極前線よりも高緯度側に位置している.岩相は主に珪質軟泥であるが,一部に石灰質軟泥が認められる.予察的な年代モデルから,その石灰質軟泥がMIS 11に相当すると考えられる.
MD19-3578コアのMIS 11区間の浮遊性有孔虫化石群集を検討した結果,温帯種であるGlobigerina bulloidesが最大で51%産出した.コアトップ試料のG. bulloides産出割合は26%であり,現代よりもMIS 11のピークが温暖であることを示唆する.また,既存の表層堆積物データベースに基づくと,G. bulloidesの産出割合は亜南極前線よりも低緯度側で増加する.すなわちMIS 11のピークにおいて亜南極前線が南下し,試料地点が同前線よりも低緯度側に位置したと考えられる.
さらに,海水温の指標である浮遊性有孔虫化石のマグネシウム/カルシウム(Mg/Ca)比を分析した.その結果,G. bulloidesのMg/Ca比は1.68から1.90 mmol/molであり,南大洋の種固有の換算式に適用すると約7.9℃から9.8℃に相当した.コアトップ試料のG. bulloidesのMg/Ca比水温は約5.0℃であり,現代よりもMIS 11の復元水温が有意に高い値を示した.以上の結果から,MIS 11において南大洋インド洋区の亜南極前線が南下し,試料地点の海水温が現代よりも約3℃から4℃上昇した可能性が示された.
試料採取地点は南大洋インド洋区クロゼ諸島周辺(MD19-3578地点: 南緯46度6分,東経49度8分)であり,現在の亜南極前線よりも高緯度側に位置している.岩相は主に珪質軟泥であるが,一部に石灰質軟泥が認められる.予察的な年代モデルから,その石灰質軟泥がMIS 11に相当すると考えられる.
MD19-3578コアのMIS 11区間の浮遊性有孔虫化石群集を検討した結果,温帯種であるGlobigerina bulloidesが最大で51%産出した.コアトップ試料のG. bulloides産出割合は26%であり,現代よりもMIS 11のピークが温暖であることを示唆する.また,既存の表層堆積物データベースに基づくと,G. bulloidesの産出割合は亜南極前線よりも低緯度側で増加する.すなわちMIS 11のピークにおいて亜南極前線が南下し,試料地点が同前線よりも低緯度側に位置したと考えられる.
さらに,海水温の指標である浮遊性有孔虫化石のマグネシウム/カルシウム(Mg/Ca)比を分析した.その結果,G. bulloidesのMg/Ca比は1.68から1.90 mmol/molであり,南大洋の種固有の換算式に適用すると約7.9℃から9.8℃に相当した.コアトップ試料のG. bulloidesのMg/Ca比水温は約5.0℃であり,現代よりもMIS 11の復元水温が有意に高い値を示した.以上の結果から,MIS 11において南大洋インド洋区の亜南極前線が南下し,試料地点の海水温が現代よりも約3℃から4℃上昇した可能性が示された.