日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (10) (オンラインポスター)

コンビーナ:草原 和弥(海洋研究開発機構)、箕輪 昌紘(北海道大学・低温科学研究所)、野木 義史(国立極地研究所)、関 宰(北海道大学低温科学研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[MIS08-P09] ロス海における鮮新世温暖期の珪藻turnoverと海洋環境変動の関連

*石野 沙季1関 宰2山本 正伸3、IODP Exp. 374 乗船研究者一同 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター、2.北海道大学 低温科学研究所、3.北海道大学大学院 地球環境科学研究院)

キーワード:珪藻、南大洋、古海洋、鮮新世、微古生物学

南大洋では,珪藻のturnover(一定期間における種分化および絶滅イベントの発生率)のピークが数百万年スケールの気候変動に伴って発生することが知られている.珪藻の進化過程に,棚氷や海氷の被覆域の変動に伴って開放水面が制限されることが影響していると考えられている.しかし,棚氷や海氷の被覆域の変化が顕著に見られる大陸棚や大陸斜面では,多くの堆積物コアが不連続な記録を有しており,堆積年代の厳密な制約が難しいため,珪藻種の出現・絶滅イベントと海洋環境の変化が詳細に対比された研究はほとんどない.
南大洋の中でもロス海周辺海域においては,海棲種であるFragilariopsis bohatyiグループの出現は3.0-3.5 Maに集中しており,珪藻の大きなturnoverピークの一翼を担っていることが明らかになってきたが,このグループの生態学的特徴は不明なままであった.国際深海科学掘削計画(IODP)Exp. 374では,ロス海大陸斜面において更新世-鮮新世の高解像度な記録を有するHole U1524Aを得ることができた.そこで,本研究では,Fragilariopsis bohatyiグループの出現過程を明らかにするため,珪藻化石の群集解析を行い,Fragilariopsis bohatyiグループの産出量変動を環境指標珪藻種やバイオマーカーに基づく古海洋学的解釈と比較した.
珪藻殻数および環境指標種の変動から,233–245 m CSF-A(ca. 3.21-3.16 Ma)に急激な温暖化で開放水面の形成が形成されたこと,およびその後に緩やかな寒冷化が起きていたことが示唆された.245 m CSF-Aの短期間において,TEX86によって復元されたSSTは急激な上昇を示し,C18FAの水素同位体比の急激な低下は氷床の急激な融解を示唆した.さらに,Fragilariopsis bohatyiグループの相対産出量は245 m CSF-Aで急激な増加を示した.これらの結果から,急激な温暖化で形成された開放水面域の存在がFragilariopsis bohatyiグループ出現の引き金になった可能性が示唆された.本発表では,超高解像度で分析した各珪藻種に基づいて開放水面域の詳細な環境変化を推定し,Fragilariopsis bohatyiグループの産出量変動との関連性ついても考察する.