日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS08] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候変動

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (10) (オンラインポスター)

コンビーナ:草原 和弥(海洋研究開発機構)、箕輪 昌紘(北海道大学・低温科学研究所)、野木 義史(国立極地研究所)、関 宰(北海道大学低温科学研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[MIS08-P11] 南極オーストラリア海盆ウィルクスランド沖における南極底層水の変化

*小林 大洋1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:南極底層水、深海アルゴ、KARE観測

南極-オーストラリア海盆ウィルクスランド沖における南極底層水(AABW)の長期変化について、歴史的船舶観測データおよび最近のDeep Argoフロートによる観測データを用いて解析した。AABWは、遅くとも1980年代から層厚減少(縮退)および低塩化しており、その速度はそれぞれ11–14 m yr-1、–0.6 × 10-3 yr-1であった。この変化傾向は、近年、低塩化が加速することで縮退も加速する傾向にある。AABWの縮退は、その高密度層(下層)の層厚が過剰に減少することで引き起こされ、それを補償するように低密度層(上層)の層厚は増加している。このコントラストは徐々に強まっており、これは同海盆におけるAABW形成で駆動される子午面循環が弱まっていることを示唆する。AABWの溶存酸素はこの50年間ほぼ一定であるが、2000年以降増加している可能性がある。2010年以降、AABWはこの長期トレンドから逸脱するような変化を示し、2010-2015年に見られた急激な縮退・低塩化が、それ以降では急減速してしまう。一方、海底直上の層厚300mで定義されるAABWの最深層は、2010年代後半に著しい高塩化を示すが、これはAABWの縮退により引き起こされたものである。2010年代後半以降、南極-オーストラリア海盆東部の広範な海域で観測されているAABW最深層の高塩化はこのように生じたと考えられる。2018年には110°Eで低塩・高酸素のAABWが観測されたが、これはおそらくビンセネス湾ポリニアで新しく形成された底層水であると考えられる。