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[MIS09-P02] 成層期の琵琶湖における堆積物中硫黄循環と底生動物への影響
キーワード:琵琶湖、硫黄、底生動物
淡水湖沼堆積物中の硫黄の生物地球化学プロセスは、湖水の硫酸濃度が低いためあまり注目されてこなかった。近年の研究では、貧酸素状態の湖沼深底部において、微生物による硫酸還元とそれに続く硫黄酸化が生じていること、その一次生産産物が湖底の底生動物を支えていることを示唆している。そこで本研究では、硫黄安定同位体比を用いて、琵琶湖における湖底堆積物中の微生物による硫黄循環と、化学合成産物による底生動物への寄与についての調査を行った。
堆積物コアと底生動物試料は湖水の成層構造が発達する2021年9月に、琵琶湖北湖の第一湖盆中央部(St. 1; 水深約90 m)と彦根沖の多景島付近(St. 2; 水深約50 m)から得られた。得られたコアを3~5 cm間隔でスライスし、間隙水中の硫酸イオン濃度、酸揮発性硫化物態硫黄(AVS)濃度とそれらの硫黄同位体比、底生動物の硫黄同位体比を測定した。
堆積物中には高濃度のAVSが検出され、微生物硫酸還元が行われていることが示唆された。AVS濃度のδ34Sの鉛直分布から、AVSは硫黄酸化細菌によって酸化・同化されていると考えられた。また、AVS濃度とδ34S値の変化から計算される同位体分別の値は−4.0‰であった。この値を用いて、底生動物の硫黄源に占めるAVS由来硫黄の寄与率を算出した。その結果、ヨコエビの0%から、最も生物量の多い多毛類の100%まで、動物種ごとにさまざまな寄与率をもっていた。これらの結果は、淡水環境であっても、深層水に貧酸素状態が発達する成層期には、堆積物中の微生物硫黄サイクルが進行し、底生動物の栄養源に影響を及ぼしていることを示している。
堆積物コアと底生動物試料は湖水の成層構造が発達する2021年9月に、琵琶湖北湖の第一湖盆中央部(St. 1; 水深約90 m)と彦根沖の多景島付近(St. 2; 水深約50 m)から得られた。得られたコアを3~5 cm間隔でスライスし、間隙水中の硫酸イオン濃度、酸揮発性硫化物態硫黄(AVS)濃度とそれらの硫黄同位体比、底生動物の硫黄同位体比を測定した。
堆積物中には高濃度のAVSが検出され、微生物硫酸還元が行われていることが示唆された。AVS濃度のδ34Sの鉛直分布から、AVSは硫黄酸化細菌によって酸化・同化されていると考えられた。また、AVS濃度とδ34S値の変化から計算される同位体分別の値は−4.0‰であった。この値を用いて、底生動物の硫黄源に占めるAVS由来硫黄の寄与率を算出した。その結果、ヨコエビの0%から、最も生物量の多い多毛類の100%まで、動物種ごとにさまざまな寄与率をもっていた。これらの結果は、淡水環境であっても、深層水に貧酸素状態が発達する成層期には、堆積物中の微生物硫黄サイクルが進行し、底生動物の栄養源に影響を及ぼしていることを示している。