11:40 〜 12:00
[MIS10-10] 大雪山における永久凍土環境
★招待講演
キーワード:永久凍土環境、高山帯、大雪山、パルサ
大雪山では、1972年に小泉岳(標高2158m)周辺で永久凍土が確認(福田・木下、1974)されて以降、近接の北海平(標高約2000m付近)でも地温観測等から永久凍土が確認されている(Sone et al., 1988)。一方、1985年には標高2000m地点において、通年の気温観測が行われ、その結果(年平均気温-3.8度)から少なくとも標高2000m以上の地域は、不連続的永久凍土帯であることが示された。さらに、曽根ほか(2016)によると2015年時点で大雪山における永久凍土の下限高度は、標高1755m付近と考えられている。また、永久凍土の分布を示唆する地形的証拠として、凍結割れ目多角形土(曽根・高橋1986)やパルサ(高橋・曽根、1988)が分布している。
ここでは、これまでの先行研究を踏まえたうえで、筆者が大雪山高山帯で継続している気温・地温の観測結果を報告するとともに、永久凍土に関連した現象について紹介する。また、大雪山周辺のアメダス観測点のデータなども用いて永久凍土の動態や今後の予測について言及する。
図1は、1996年~2006年の大雪山小泉岳観測点(標高2110m)と富士山山頂観測点(標高3775m)とにおける月平均気温の推移を示した。これによると1月から3月と11月から12月の期間においては、小泉岳観測点の気温が富士山山頂観測点の気温を下回っていた。なお、この期間の年平均気温は、それぞれ-4.4℃と-5.9℃であった。この傾向は、近年(2018年、2020年、2021年)の平均気温においても当てはまる。また、小泉岳観測点における1996年~2006年の期間の凍結指数(2700.6℃・days)と融解指数(℃・days)の値をHarris(1981)の永久凍土の分類に当てはめると、小泉岳観測点は、連続的永久凍土と不連続的永久凍土の境界付近に位置づけられる。
近年、大雪山でも地球温暖化の影響が出ている可能性があり、パルサの消滅も確認されている。とくに、大雪山周辺地域で融解期(5月~7月)における降水量の増大がみられ、これが凍土を効率的に溶かしている可能性がある。
ここでは、これまでの先行研究を踏まえたうえで、筆者が大雪山高山帯で継続している気温・地温の観測結果を報告するとともに、永久凍土に関連した現象について紹介する。また、大雪山周辺のアメダス観測点のデータなども用いて永久凍土の動態や今後の予測について言及する。
図1は、1996年~2006年の大雪山小泉岳観測点(標高2110m)と富士山山頂観測点(標高3775m)とにおける月平均気温の推移を示した。これによると1月から3月と11月から12月の期間においては、小泉岳観測点の気温が富士山山頂観測点の気温を下回っていた。なお、この期間の年平均気温は、それぞれ-4.4℃と-5.9℃であった。この傾向は、近年(2018年、2020年、2021年)の平均気温においても当てはまる。また、小泉岳観測点における1996年~2006年の期間の凍結指数(2700.6℃・days)と融解指数(℃・days)の値をHarris(1981)の永久凍土の分類に当てはめると、小泉岳観測点は、連続的永久凍土と不連続的永久凍土の境界付近に位置づけられる。
近年、大雪山でも地球温暖化の影響が出ている可能性があり、パルサの消滅も確認されている。とくに、大雪山周辺地域で融解期(5月~7月)における降水量の増大がみられ、これが凍土を効率的に溶かしている可能性がある。