日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 山の科学

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (11) (オンラインポスター)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[MIS10-P03] 九重連山稲星山周辺における微地形の三次元形態と地温環境

*小山 拓志1、氏田 洵悠2 (1.大分大学教育学部、2.大分県立国東高等学校)

キーワード:微地形、三次元形態、地温環境、周氷河環境、稲星山、大分県

1.はじめに
 世界各地の高山および両極地域では,様々なタイプの周氷河現象・地形が確認されており,その形成の基本的要因は,低温の気候環境にあると考えられている(Washburn1973,1979,フレンチ1984,松岡2002など)。周氷河地形の中でも構造土は,周氷河地域において普遍的に認められる微地形であるが,その規模や形態は,構成物質や砂礫の淘汰の状況,植被の有無などによって大きく異なっている(Troll1944,Washburn1979,小疇1965,1980など)。そして,これまで,それらの形成過程などに関する研究は,日本アルプスの高山帯や北海道の山岳地において進められてきた。
 一方で,低緯度地域である九州においても,阿蘇中岳周辺や霧島山などの一部山岳地において,構造土と類似した微地形の分布が報告されている(横山,2002など)。しかし,九州における周氷河現象,あるいは周氷河地形に関する研究は報告程度のものが多く,それらが実際に構造土であるかについては未だ明らかとなっていない。特に,構造土の成因に大きく関与する地温環境や物質移動量に関する観測・実測値も不足しているため,周氷河現象の有無についても分からないことが多い。
 そこで,本研究では,九重連山南部に位置する稲星山(1774m)周辺に分布する構造土に類似した微地形に注目し,それらの三次元形態と地温環境を測定することにした。

2.調査手法
 稲星山周辺に分布する微地形の三次元形態を明らかにするため,小型ドローンおよび高所撮影用ロングロッドを活用した写真測量を行った。また,撮影した写真をSfMソフトウェアに取り込み,3次元モデルの作成を行った(数値標高モデルの作成)。
 地温観測は,稲星山北側登山道に近接する斜面上において,砂粒物質の露出する地点(裸地)と,表面が植物に覆われている地点(植被地)の計4地点(標高1681~1703m)で実施した。観測機器は,日置電機社製のニードル式小型防水データロガー「データミニ 3633 」,T&D社製のサーミスタ式小型防水データロガー「おんどとりJr RTR-502」を使用した。観測期間は,2015年12月14日~2016年12月13日である。

3.結果と考察
 3-1.微地形の形態
 微地形の形態をSfMによって3次元モデル化し,植生との関係をGISによって解析した。その結果,稲星山周辺の微地形の形態は,斜面方位によって異なることが明らかとなった。すなわち,東向き斜面は植被階状土に類似した階段状,西向き斜面はソリフラクションローブに類似した舌状であった。
 3-2.地温環境
 裸地で計測した5cm深の年平均地温は約9.0℃で,最低地温は-8.0℃程度(1月)であった。いずれの地点も,11月頃から地温は0℃で推移しはじめるが,凍結・融解サイクルは春先や秋口だけでなく,冬季にも出現していることが確認された。それらの回数は,最大で64回/年(地点D:1703m),最低で17回/年(地点B:1685m)であった(いずれも,裸地の5cm深)。
 以上のことから,稲星山周辺における地温環境は,日本アルプスの高山帯に比べ高温の傾向を示すが,凍結融解サイクル(日数)は同程度であることが明らかとなった。