日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS10] 山の科学

2023年5月26日(金) 15:30 〜 17:00 オンラインポスターZoom会場 (11) (オンラインポスター)

コンビーナ:苅谷 愛彦(専修大学文学部環境地理学科)、佐々木 明彦(国士舘大学文学部史学地理学科 地理・環境コース)、奈良間 千之(新潟大学理学部フィールド科学人材育成プログラム)、西村 基志(国立極地研究所 国際北極環境研究センター)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/26 17:15-18:45)

15:30 〜 17:00

[MIS10-P08] Raspberry Piを用いた高耐候型地上観測システムのプロトタイプ開発

*井澤 咲乃1永井 裕人1 (1.早稲田大学 教育学部)

キーワード:ラズベリーパイ、地上観測

近年、人工衛星は頻繁に打ち上げられ、人工知能(AI)技術の進歩も目覚ましい。これらに伴い、データ校正・検証のための衛星観測とデータ処理技術も著しく発展を遂げている。一方で、地上観測技術はこれらに対応した大きな発展がみられていない。そこで本研究では高度化する衛星観測に対応した地上観測の発展を目的とし、低温・積雪環境下で運用可能な小型地上観測システムの初期開発を行った。
シングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」を用いて小型地上観測システムを開発した。そして小型で運搬可能な地上観測機器を目指し、可搬性とともに省電力性や耐候性について検討した。また野外実証実験を通じて、実用の可能性や汎用性を評価した。電力供給には乾電池を用いることで、本システムの構造と管理の簡素化、また長期利用を可能にした。Raspberry Piに温湿度・気圧センサモジュール、カメラモジュールを接続し、定期的に温度・湿度・気圧データと画像を取得した。取得データをGoogleドライブ上へ保存するシステム構造により、遠隔地においてデータを取得することを可能にした。
野外実証実験では富士山5–6合目において本システムを動作させ、可搬性についても検討を行った。その結果、データの取得と取得データのドライブへのアップロードが確認できた。さらに低温環境下での実証実験として冷凍庫内でのシステム利用を行い、−15℃前後の低温環境下においても、正常な動作が確認できた。またカメラモジュールで撮影した画像の解像度を検証し、実運用に向けて、カメラの設置位置や使用カメラについて検討した。電源に関しては、モバイルバッテリー及び単一乾電池で稼働させることが確認できた。
今後は電源管理方法や極限環境下での運用に関する実証実験を繰り返し行い、取得データの処理方法について検討を行うことで更なるシステムの向上を図る。本システムはRaspberry Piを用いて、基本的な構造は気象センサとカメラのみの簡素な構造である。カメラを用いることで状況の把握はもちろん、AIを活用して積雪深や降水量の自動計測も可能になりうる。またRaspberry Piに接続するセンサや機器を変えることで目的に合わせてシステムを構築できる。積雪環境下に限らず、砂漠や湿地、熱帯雨林などをはじめとする、現在地上観測が困難であるあらゆる地点で観測が可能になると考えられる。さらにRaspberry Piや各種接続センサは、安価で構築可能であるため、多くの地点に展開可能であり、高密度かつ高頻度な観測ができる。また構築や管理に高度な技術を要さないことから、専門分野に問わず容易に構築可能である。本システムの汎用性の高さは、地上観測システムの可能性を拡大させることができるだろう。