日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] ジオパーク

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、座長:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

13:45 〜 14:00

[MIS11-01] 島原半島ユネスコ世界ジオパークにおけるジオパーク学習効果の検証

★招待講演

*藤岡 悠一郎1、大野 希一2森本 拓3、園田 レナ (1.九州大学大学院比較社会文化研究院、2.鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局、3.島原半島ジオパーク協議会事務局)

キーワード:ジオパーク学習、学習効果、島原半島ユネスコ世界ジオパーク

ユネスコ世界ジオパークでは、「大地の遺産の保護・保全」、「大地の遺産を用いた教育」、「大地の遺産を用いた観光」という3つの柱となる事業が実施されている。ジオパークが目指す教育とは、「持続可能な社会と地球を実現するためのメッセージを伝える方法であり実践である(竹之内 2011)」と考えられている。こうした教育活動を通じて、地域の持続可能な発展を推進することもジオパークの重要な使命となっている。
 長崎県に位置する島原半島は、2009年に日本で初めて世界ジオパークに指定された地域である。本ジオパークでは、地元住民のジオパークに対する理解不足が一つの課題となっている。そのため、ジオパークを活用した地域振興を考えていく上で、将来の世代に対するジオパーク教育が重要な意味を有している。
 本地域では、2010年から市内の学校に通う生徒を対象としたジオパーク学習が実施されている。ジオパーク学習は、地元住民の郷土へのアイデンティティの再構築につながる可能性が高いことなどが指摘されているが(柚洞ほか 2016)、本地域においてはその効果の検証はなされていない。また、ジオパーク学習の内容等によってその効果は異なることも考えられる。本研究では、島原市の2つの中学校の中学生を対象にジオパーク学習に関するアンケート調査を実施し、その効果を検証した。
 調査は、2021年12 月13日~12月24日にかけて、ジオパーク学習を実施している島原市内の中学校2校(以下、A中学校、B中学校とする)の生徒を調査対象としてアンケート調査を実施した。対象者は、A中学校の1年生と2年生、B中学校は1年生とした。なお、A中学校とB中学校を調査対象校として選択した理由は、受講している教育プログラムが異なるため、ジオパーク学習の効果を比較できると考えたためである。A中学校では、島原市内のまち歩きと軽登山を通じて、江戸時代に起きた山崩れがもたらした災いと恵みについて学ぶジオパーク学習が実施されている。一方、 B中学校では、10年以上にわたってバスツアーを通じて、島原半島の成り立ちについて学ぶジオパーク学習が実施されている。 そのため、これらの2校を対象とすることで、異なるジオパーク学習により、 生徒のジオパークに対するイメージや認知度などにどのような差がみられるかを明らかにする。
 アンケート調査を実施し、A中学校1年生52名、2年生70名、 B中学校1年生51名から回答を得た。結果として、A中学校と B 中学校でジオパークに対する認識が異なる点が認められた。例えば、「ジオパークが当てはまる科目」という質問項目に対し、両校で最も多くの生徒が選択していた「総合」を除いて、 A 中学校の14% の生徒が「地理」、 12% の生徒が「歴史」を選択しており、B中学校では22%の生徒が「理科」を選択していた。また、A中学校の生徒のうち「自然の恵み」と「歴史・文化・民話」のカテゴリーに分類される選択肢を選んでいる生徒の割合がB中学校よりも多くなっていた。一方 、「島原半島の成り立ち」と「災害・火山」のカテゴリーに分類される選択肢を選択した生徒の割合はA中学校よりもB中学校の方が多くなっていた。このことから、受講するジオパーク学習の内容によって、ジオパークに対するイメージが異なっていることが示唆された。
 次に、A中学校の学年差に注目すると、「ジオパークの理解度」に関する質問では、1年生の83%の生徒が「理解している(ジオパークが何か説明できる)」もしくは、「ある程度 理解している(説明はできない)」を選択しており、 2年生の62%の生徒が「理解している(ジオパークが何か説明できる)」もしくは、「ある程度理解している(説明はできない)」を選択していた。その理由としては、2年生の生徒に無回答者が多くみられたこととジオパーク学習に参加したことがない生徒が2年生に多かったことが考えられる。すなわち、ジオパークをどれくらい理解しているかについては、年齢よりもジオパーク学習への参加経験の回数が関係していることが示唆された。