日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] ジオパーク

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、座長:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

14:15 〜 14:30

[MIS11-03] 「防災科研 地震だねっと!」の展開と活用

*松原 誠1西澤 あずさ1青井 真1竹之内 耕2 (1.防災科学技術研究所、2.糸魚川フォッサマグナミュージアム)

キーワード:防災科研 地震だねっと!、震源分布、ジオパーク、ガイド、理科教育、防災教育

防災科学技術研究所(防災科研)では、ジオサイトで足元の地球の活動を可視化するという観点から、防災科研陸海統合地震津波火山観測網(MOWLAS)で捉えた現在の地震活動や歴史地震を簡単に見られる「防災科研 地震だねっと!」(以下、地震だねっと!)というウェブサイト(http://www.geopark.bosai.go.jp/)を構築した(松原ほか,2018)。最初の提供先として糸魚川世界ユネスコジオパークのフォッサマグナパークのリニューアルオープンを機に2018年7月にウェブサイトを開設し、パーク内に設置された案内板のQRコードから地震だねっと!に接続することにより、現在の糸魚川周辺の地震活動を閲覧できるウェブサイトがスタートした。
 地震だねっと!に接続すると過去1年間の震源分布図が表示される。色で震源の深さを、丸の大きさでマグニチュードを表している。震源分布は1時間毎に更新され、最新の地震は星印で表示されている。地図には、現在地に加え、火山・活断層・河川・県境なども表示され、周辺を含めた位置を捉えやすくなっている。震源分布図の期間は過去24時間~20年間が選択可能である。地元で揺れを感じた記憶が残っている大きな地震もプロットされると同時に無感の微小地震の分布も表示されるので、足元の地球内部でどのような活動が起こっているかを診ることができる。さらに震源分布図には過去の被害地震の位置も示されており、下段にはそれらの被害地震の情報も列挙されているので、地元での有史以来の地震活動を把握することが可能である。
 地震だねっと!開設後、毎日20-30回の所外からのアクセスが確認されている。また、フォッサマグナパークにおいて団体の見学があり、糸魚川ジオパークで当サイトについて紹介した際には50~60回のアクセスがあった。
フォッサマグナパークでの団体見学では、地下と地表を結ぶ道具として、見学者が解説板のQRコードから地震だねっと!を閲覧している。閲覧することにより、無感の地震が多く起こっていることや地震が起きる場所と起きない場所があること、活断層に沿って起きている地震もある一方で、活断層以外のところで起きている地震もある等に気付く。これらは断層と地震の関係を時間と空間の両面で捉える重要な出発点である(竹之内,2020)。
 防災科研は日本ジオパークネットワーク(JGN)と包括的連携協定を2018年10月13日に締結した。また、糸魚川ユネスコ世界ジオパークとは地震だねっと!の活用に関する覚書を交わした。その後、2023年2月までに合計16のジオパークに提供してきた。今後もJGNを通じて、要望のあるジオパークに向けてウェブサイトを構築し提供していく予定である。
箱根ジオパークの大涌谷にある箱根ジオミュージアムの展示用に、「防災科研 揺れてるねっと!」(以下、揺れてるねっと)というウェブサイトを2020年4月に開設した.揺れてるねっとでは,箱根ジオミュージアム周辺の神奈川県温泉地学研究所や気象庁,防災科研の10観測点の直近10分間の地震波形を表示している.ジオミュージアムではモニター画面に常時映っており、箱根周辺の揺れの様子を見ることができる。
 山陰海岸ジオパークには断層露頭や博物館などの4か所に地震だねっと!を提供している。断層露頭を案内する際にはガイドが地震だねっと!も紹介するなどして活用されている。ジオパーク関係者により、域内の学校の生徒の見学の際の活用も検討されている[あ西1] 。我々は、地震だねっと!を全国の学校の授業などでも活用できるのではないかと考えている。学校の授業の理科で地震を扱うのは中学校で2時間程度である。その際に紹介し、その後も興味がわいた際に先生や生徒が閲覧したり、大きな地震がニュースなどで取り上げられた際に、地震だねっと!を振り返ったりすることにより、地元の地震活動についての知識を広められるのではないかと考えている.それ以外にも、小学校においても、避難訓練や防災教育の際に地震だねっと!を紹介していただき、家族などで閲覧する機会が増えればと考えている.
 2018年に防災科研とJGNとの間で締結した連携協定および各ジオパーク推進協議会と交わした覚書に基づき、防災科研は過去20年の震源分布までさかのぼれるジオパーク周辺の震源分布図を閲覧できるサイトである「防災科研 地震だねっと!」を16のジオパークに提供してきた。このウェブサイトは、理科教育や防災教育の際にも活用できると思われる。

松原 誠,竹之内 耕,西澤 あずさ,青井 真(2018):「防災科研 地震だねっと!」の開設,日本地震学会秋季大会予稿集,S20-06.
竹之内 耕(2020):断層と地震とつなぐ『防災科研 地震だねっと』-新潟県糸魚川市フォッサマグナパークへの導入-, なゐふる, 120, 6-7.