日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] ジオパーク

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、座長:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

14:30 〜 14:45

[MIS11-04] 浅間山北麓ジオパークで行われた子供向け科学探究プログラム

*古川 広樹1、佐藤 明子2藤間 藍3日色 知也4、高橋 正樹5安井 真也5金丸 龍夫5 (1.浅間山ジオパーク推進協議会、2.平塚市立金目中学校五領ヶ台分校、3.慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科、4.日本工営株式会社、5.日本大学)

キーワード:探究学習、理科教育、1783年浅間山噴火、浅間山北麓ジオパーク

第21回地震火山地質こどもサマースクール (以下、「サマースクール」) の開催地となった浅間山北麓ジオパーク(群馬県嬬恋村・長野原町)は、1783年天明浅間山噴火に伴い発生した溶岩流、火砕流、岩屑なだれの3つの流れが観察できるフィールドを持ち、火山災害の記録と遺物が豊富に存在する地域である。
中でも興味を引くのは、当時の鎌原村 (現嬬恋村鎌原地区) を埋めた岩屑なだれである。その発生機構は火山研究者の間でも意見が分かれ、今なお未解明な部分が多い。
サマースクールでは、物理現象としての「流れ」に焦点を当て、専門家の話、野外での観察、大地の成り立ちを知る実験などを通して鎌原村を埋めた流れのナゾに迫った。
プログラムは「科学的な方法で探究すること」を基本方針とし、(1) 予断なく観察する (2) 答えではなく論理を導き、証拠を探す (3) 論理・証拠に基づいて仮説を立ててみる、というアプローチをとった。
参加した子どもたちは、4つのグループに分かれて活動し、最後に調べたことをまとめて発表した。発表内容はそれぞれのグループで異なったものとなり、火山に対するユニークな視点や柔軟な考え方が示された。活動が進むにつれ、各グループ内の会話量に差が見られたが、いずれのグループも写真やイラストを工夫して、自分たちの言葉で発表した。
参加者の大半を占める小学高学年児童に向けて、どのような科学的探究活動が展開できるのか?その中での大人の適切な役割とは何か?科学的探究をベースとするプログラムは、子どものみならず、スタッフとして関わった大人を巻き込んで議論を沸き起こした。
活動に参加した元教員やジオパーク関係者らからは、「これまでの地域学習の考え方が変わった」「不思議を分かりやすく示すことが、子どもたちの主体的な学びにつながる」「興味が持てないものを探求することはできない」などの声が上がった。
サマースクールにおける「答えのない学び」に子どもたちはどのように反応したか、また、その実施経験が、ジオパーク地域の教育関係者の間に、従来行われていた地域学習への意識変容をもたらしたことで、実施地域の教育活動にどのような変化が起こったのか考察する。