日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] ジオパーク

2023年5月21日(日) 13:45 〜 15:00 201B (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、座長:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)

14:45 〜 15:00

[MIS11-05] 地球惑星科学(地学,地理学)を背景としない高校教員ができる,ジオパークを利用したフィールドワークの提案

*藤原 靖1 (1.神奈川県立生田高等学校)

キーワード:高等学校、地学基礎、地理総合、ジオパーク、地域素材、フィールドワーク

高等学校「地学基礎」の履修率は,現行の平成21年告示高等学校学習指導要領(以下,現行学習指導要領と明記)(文部科学省, 2009)が全学年で実施されている2015年から2019年にかけて約26%で推移しており,平成11年告示高等学校学習指導要領(以下,前学習指導要領と明記)(文部省, 1999)の「地学I」の履修率(約7%)と比較すると大幅に増加した(吉田・高木, 2020).その結果,吉田・高木,(2020)は,全国の高等学校の「地学基礎」担当教員のおよそ半数は,地学領域を専門としない理科教員,または学生時代に地球科学関連教室の出身であるが,高校地学の教員採用がないために他科目で採用された理科教員が担当している計算になるとしている.2022年度から完全実施の平成30年告示高等学校学習指導要領(新学習指導要領と明記)(文部科学省,2018)と,現行学習指導要領(文部科学省,2009)では,理科の科目構成があまり変わらないことから,「地学基礎」の全国の履修率は現行の「地学基礎」と大きく変わらないのではないかと考えている.また,1979年から2018年の神奈川県公立学校教員採用候補者選考試験において,高校理科(地学)区分の試験を実施したのは2回のみであり,1994年に1名,2009年に7人採用されただけであり,2000年以前に科目の区分を設けずに9回 高校理科の試験を実施しておりそのなかでの地学の採用者は不明である(吉田・高木, 2020).したがって,神奈川県内の高校においても「地学基礎」を地学領域を専門としない理科教員が担当しているケースが多いことが考えられる.
また,現行学習指導要領(文部科学省,2009)における高等学校「地理A」「地理B」の履修率は,2016年においてそれぞれ, 約37%,約25%である(須原,2018).新学習指導要領(文部科学省,2018)では「地理総合」が必修となり,地理学領域を専門としない教員が担当するケースが増えていると考えられる.

「地学基礎」「地理総合」において,地学・地理学を専門としない教員が,地域素材やフィールドワークを取り入れた実践を行うことは困難だと考える.
この困難さを克服できる実践として,箱根ジオパークを利用し,2013年に神奈川県立相模原青陵高等学校で学校設定科目・環境フィールドワークBにおいて「高校生が作る「箱根ジオツアープラン」!!」,2022年に神奈川県立生田高等学校で自然科学教室「箱根火山観光を100倍楽しむためのフィールドワーク」を行った.本発表ではこれら実践について報告する.

【引用文献】
文部省, 1999. 高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編. 大日本図書, 310p.
文部科学省, 2009. 高等学校学習指導要領(平成21年告示)解説 理科編. 131p.
文部科学省, 2018. 高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編. 258p.
須原洋次, 2018. 高校地理教育実践の課題と展望―地理新科目の設置を見据えて―. 人文地理,70(1)111-127.
吉田幸平・高木秀雄, 2020. 高等学校理科「地学基礎」「地学」開設率の都道府県ごとの違いとその要因. 地学雑誌, 129(3), 337-354.