日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] ジオパーク

2023年5月22日(月) 09:00 〜 10:15 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、青木 賢人(金沢大学地域創造学類)、座長:田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、大野 希一(鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会事務局)、尾方 隆幸(琉球大学大学院理工学研究科)

09:15 〜 09:30

[MIS11-07] 姫島八番目の不思議?: CO2湧出海域が意味するもの

*藤井 賢彦1山田 誠2和田 茂樹3、大植 学3小埜 恒夫4 (1.北海道大学大学院地球環境科学研究院、2.龍谷大学経済学部、3.筑波大学下田臨海実験センター、4.水産研究・教育機構水産資源研究所)

キーワード:おおいた姫島ジオパーク、CO2湧出海域、海洋酸性化

姫島は瀬戸内海の西端、大分県国東半島の北に位置する周囲17㎞の離島である。「火山が生み出した神秘の島」をテーマとして2013年に日本ジオパークに認定された。姫島には数多くの言い伝えがあり、中でも姫島七不思議は観光資源となっている。これらの言い伝えの多くが姫島の火山活動と密接に関係している。

姫島沿岸の幾つかの海域では、海底から気体が湧出していることが地元では昔から知られていた。そして、その気体成分はCO2が主であることが大沢・三島 (2017)によって科学的に明らかにされた。CO2湧出海域は今後、人間社会がCO2排出の大幅削減に取り組まない場合に懸念される海洋環境を先取りしていると考えられ、海洋科学、とりわけ海洋酸性化研究の観点から、これらの海域を対象にした研究が国内外で精力的に進められている。国内でも幾つかのCO2湧出海域が見つかっており、うち沖縄県の硫黄鳥島(Inoue et al., 2013)や東京都の式根島(Agostini et al., 2015)では海洋酸性化の観点から研究が行われてきた。しかし、これまでに日本国内で見つかっているCO2湧出海域は亜熱帯域もしくは温帯域と亜熱帯域の境界域に位置する。そこで、亜熱帯域とは生物相が異なる温帯域に属する姫島のCO2湧出海域を調査することは学術的にも社会的にも意義があると考え、2022年に海洋調査を開始した。

調査はこれまでに2022年5月、7月、12月と2023年1月、2月に実施した。姫島の東端と西端の2海域で実施したこれまでの調査結果は、CO2湧出海域ではそれ以外の海域に比べて海水中のCO2濃度が高く、それに起因するpHや炭酸カルシウム飽和度の有意な低下が見られることから、人為起源COの排出を大幅に削減しないと今世紀末までに到達すると予測される値に近いことがわかった。このような海洋環境下での実際の海洋生態系への影響についても現在解析を進めているところであり、詳細な結果を本発表時に紹介する予定である。姫島沿岸のCO2湧出海域は比較的アクセスしやすい浅海域にあり、今後は学術研究の対象としてだけでなく、ジオパークの観点からも興味深い見どころとして位置づけられると考えられる。