09:30 〜 09:45
[MIS11-08] ジオパーク理念に根差した持続可能な鉱山開発の推進
キーワード:糸魚川ユネスコ世界ジオパーク、青海石灰岩、地域資源の保全、持続可能な鉱山開発
1 はじめに
糸魚川ユネスコ世界ジオパークは,2009年に日本で初めて世界ジオパークに認定された地域のひとつである.日本列島の地質を分断する糸魚川―静岡構造線が通り,西側には国石・ヒスイを含む古い時代の岩石が,東側にはフォッサマグナを埋め立てた新しい時代の岩石がそれぞれ分布し,その地質多様性により豊かな生態系及び文化が育まれている.
当ジオパークにある黒姫山周辺には,石炭系-ペルム系青海石灰岩体が広く分布している.青海石灰岩は,古太平洋の礁性石灰岩の成長や8千万年間にわたる環境変化を記録しており,世界的にも学術的価値が高い地質遺産である.一方,青海石灰岩はセメントやカーバイド製品などの原料として採掘されており,石灰石を利用した製造業は糸魚川市の主要産業として地域経済と雇用を支えている.
2 次期開発計画に対する学術調査委員会
2020年,市内の製造業者により黒姫山周辺の次期開発計画が発表された.ジオパーク活動の基本理念は,地質遺産の保全と持続可能な社会の実現にある.そのため,ジオパーク地域内の鉱山開発では,天然鉱物資源の持続的利用の必要性を十分検討し,開発に伴う自然への影響が最小限となるよう努力し,開発によって明らかとなる青海石灰岩体の地質構造、堆積構造を連続的に調査記録していくことが期待されている.そこで,地域住民-開発者-自治体-研究者-ジオパーク運営団体が連携し,地域資源の持続的な保全と活用,周辺環境への影響などについて話し合う場として,2020年度から2021年度にかけてジオパーク運営組織内に特別委員会が設立された.組織体制は,委員に大学関係者や地域住民,参考人に開発者や関係行政機関,事務局にジオパーク運営団体である.
委員会では,自然資源及び人文資源の評価と妥当性,記録保全を目的とする学術調査の仕様,地域住民の生活への影響等を審議するため,周辺地域を含む現地調査,専門分野で構成される小委員会(地形地質・動植物・考古歴史),全ての委員で構成される全体会を複数回開催した.また,より広く地域住民の声を拾うため,住民説明会も複数回開催した.その結果,開発に伴う環境への影響と開発地の価値を学術的に把握することができ,環境負荷の軽減方法や記録を目的とする継続的な学術調査の仕様及び体制を検討することができた.これら検討事項を実施するため,2022年度からは後継となる委員会を設立し,活動を継続している.また,これらの活動が永続的に継続されるように自治体,地域住民,開発者による協定を締結するまでに至っている.
3 ジオパーク理念に根差した持続可能な鉱山開発
地域資源の保全と開発のバランスを図る手段として,学術的価値の優劣に基づき保全するエリアと開発するエリアを線引きする手がある.これは明快である反面,保全する側と開発する側の分断を生む可能性をはらんでいる.地域資源の効率的な保全と開発,開発により明らかとなる地域資源の記録を実現するためには,地域のあらゆるステークホルダーが協議する場が必要である.本発表では,学術調査委員会での活動内容を紹介し,ジオパーク地域における鉱山開発のあり方と,開発により明らかとなる地質情報の調査スキーム(積層記録)によって期待される成果について発表する.
糸魚川ユネスコ世界ジオパークは,2009年に日本で初めて世界ジオパークに認定された地域のひとつである.日本列島の地質を分断する糸魚川―静岡構造線が通り,西側には国石・ヒスイを含む古い時代の岩石が,東側にはフォッサマグナを埋め立てた新しい時代の岩石がそれぞれ分布し,その地質多様性により豊かな生態系及び文化が育まれている.
当ジオパークにある黒姫山周辺には,石炭系-ペルム系青海石灰岩体が広く分布している.青海石灰岩は,古太平洋の礁性石灰岩の成長や8千万年間にわたる環境変化を記録しており,世界的にも学術的価値が高い地質遺産である.一方,青海石灰岩はセメントやカーバイド製品などの原料として採掘されており,石灰石を利用した製造業は糸魚川市の主要産業として地域経済と雇用を支えている.
2 次期開発計画に対する学術調査委員会
2020年,市内の製造業者により黒姫山周辺の次期開発計画が発表された.ジオパーク活動の基本理念は,地質遺産の保全と持続可能な社会の実現にある.そのため,ジオパーク地域内の鉱山開発では,天然鉱物資源の持続的利用の必要性を十分検討し,開発に伴う自然への影響が最小限となるよう努力し,開発によって明らかとなる青海石灰岩体の地質構造、堆積構造を連続的に調査記録していくことが期待されている.そこで,地域住民-開発者-自治体-研究者-ジオパーク運営団体が連携し,地域資源の持続的な保全と活用,周辺環境への影響などについて話し合う場として,2020年度から2021年度にかけてジオパーク運営組織内に特別委員会が設立された.組織体制は,委員に大学関係者や地域住民,参考人に開発者や関係行政機関,事務局にジオパーク運営団体である.
委員会では,自然資源及び人文資源の評価と妥当性,記録保全を目的とする学術調査の仕様,地域住民の生活への影響等を審議するため,周辺地域を含む現地調査,専門分野で構成される小委員会(地形地質・動植物・考古歴史),全ての委員で構成される全体会を複数回開催した.また,より広く地域住民の声を拾うため,住民説明会も複数回開催した.その結果,開発に伴う環境への影響と開発地の価値を学術的に把握することができ,環境負荷の軽減方法や記録を目的とする継続的な学術調査の仕様及び体制を検討することができた.これら検討事項を実施するため,2022年度からは後継となる委員会を設立し,活動を継続している.また,これらの活動が永続的に継続されるように自治体,地域住民,開発者による協定を締結するまでに至っている.
3 ジオパーク理念に根差した持続可能な鉱山開発
地域資源の保全と開発のバランスを図る手段として,学術的価値の優劣に基づき保全するエリアと開発するエリアを線引きする手がある.これは明快である反面,保全する側と開発する側の分断を生む可能性をはらんでいる.地域資源の効率的な保全と開発,開発により明らかとなる地域資源の記録を実現するためには,地域のあらゆるステークホルダーが協議する場が必要である.本発表では,学術調査委員会での活動内容を紹介し,ジオパーク地域における鉱山開発のあり方と,開発により明らかとなる地質情報の調査スキーム(積層記録)によって期待される成果について発表する.