日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 地質学のいま

2023年5月24日(水) 10:45 〜 12:00 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:辻森 樹(東北大学)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、山口 飛鳥(東京大学大気海洋研究所)、尾上 哲治(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、座長:川村 紀子(海上保安大学校 基礎教育講座)、山口 飛鳥(東京大学大気海洋研究所)

11:00 〜 11:15

[MIS13-08] μXRFとμXRDによる非破壊・広域・微小部の組成・鉱物分析とその地球惑星科学への応用

*山口 飛鳥1、小川 展弘1 (1.東京大学大気海洋研究所)

キーワード:微小部XRF、微小部XRD

蛍光X線分析(X-ray fluorescence analysis: XRF)・X線回折分析(X-ray diffraction analysis: XRD)は物質の化学組成情報と結晶学的情報を得るための基礎的分析手法であり、地球惑星科学のさまざまな分野で幅広く用いられている。従来、XRF・XRDはいずれも粉末試料(および粉末から作成したガラスビード)を対象に行われることがほとんどであり、分析にはそれぞれ0.1-1g程度の試料が必要であった。また、粉末化が必要であるため、試料を切り取って粉砕する必要があり、サンプリングバイアスが生じる、試料中の微細スケールの組成バリエーションが均質化されてしまうなどの問題があった。これらは、幅広い空間スケールの現象を扱う地球惑星科学では本質的な問題となりうる。

近年、X線分析技術の進歩により、XRF, XRDともに径数十μm程度の微小部分析およびマッピングが可能となり、これまで放射光を用いてしかできなかった微小部XRF・XRD分析が実験室レベルで可能になってきているが、未だに国内での適用例は多くない。東京大学大気海洋研究所では、Bruker社製μXRF (M4 TORNADO PLUS) およびμXRD (D8 DISCOVER)をこの数年で相次いで導入し、運用を開始した。現時点で行っている構造地質分野への応用例としては、μXRFにより、断層岩の研磨片内部の組成バリエーションが面的に描き出され、また、μXRDを用いた断層岩薄片のピンポイント分析からは、すべり面でイライトの結晶度が増加すること、方解石が消失することなどが判明した(Kimura, G. et al., 2021, G-cubed, e2021GC009855)。このように、μXRFは岩石研磨片の組成マッピング、μXRDは薄片中の鉱物組成ピンポイント分析、生体鉱物の方解石/アラゴナイトの区分、粘土鉱物の配向性評価などに適しており、今後、地球外物質や実験生成物など、地球惑星科学の幅広い分野への応用が期待される。