日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] 地質学のいま

2023年5月25日(木) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (14) (オンラインポスター)

コンビーナ:辻森 樹(東北大学)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、山口 飛鳥(東京大学大気海洋研究所)、尾上 哲治(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/24 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[MIS13-P02] 沈み込みチャネル成長と高圧変成岩体上昇に関する2D動力学モデリング

*志関 弘平1辻森 樹1 (1.東北大学)

キーワード:2次元岩石熱力学モデリング、沈み込みチャネル、高圧メランジュ、高圧変成岩上昇、温度圧力経路

エクロジャイト化した玄武岩質の海洋地殻は一般的にマントルかんらん岩より高密度であるが、収束プレート境界のダイナミクスにより、その断片が変成岩体として造山帯の地殻浅所まで上昇することがある。しかし、エクロジャイトなどの高圧・超高圧変成岩は、自身の浮力により上昇可能なものはまれで、上昇には何らかの低密度物質の補助が必要なことが多い。また、浮力以外にエクロジャイトの上昇に大きな影響を与えるパラメータの存在も示唆されている(例えば、Morita, Tsujimori et al., 2022 J. Petrol.)。本研究では、海洋プレート沈み込みのジオダイナミクスを理解するために、I2VISコード(Gerya and Yuen 2003 EPSL)を用いた2次元動力学数値モデルの手法で、プレート収束速度、沈み込み角度、堆積物の量などのパラメーター値の評価を行った。
 数値計算の結果、収束速度が大きい場合、より多くの堆積物が沈み込みチャネルに引きずり込まれるほか、大陸地殻に褶曲が起こり沈み込みチャネルの肥大化が発生した。沈み込みチャネル内の流れをポアズイユ流とクエット流により近似すると、チャネル内の速度場はチャンネル幅の2乗に比例する。つまり収束速度が大きい場合ほど高圧変成岩の上昇が起こりやすいと考えられる。収束速度を 10 cm/yr、海洋底の堆積物の厚さを1,500 mにしたモデルの結果を図に示す。図Aに岩相配置、図Bに速度場と粘性分布を、図Cに上昇した海洋地殻物質と堆積物の温度圧力経路を示す。図A, Bから、大陸地殻に褶曲が起こり沈み込みチャネルの肥大化が起こったこと、沈み込みチャネル領域において岩体の上昇が起こったことがわかる。また図Cからは、数値計算で上昇した岩体の変成ピーク温度圧力条件が1.5 GPa, 400℃程度であり、青色片岩相の変成を受けた高圧変成岩に相当することが分かる。
 予察的な数値計算の結果、次の2点が明らかとなった。(1) 堆積物は青色片岩相程度の比較的浅部の高圧変成岩体上昇の駆動力となりうるが、その上昇はモホ面付近で停滞する。これは多数の先行研究で報告されている地質学的事実と一致する。(2) 沈み込みチャネル内の物質の温度圧力経路は低温熱源であるスラブからの距離によって大きく変化する。これは沈み込みチャネル内で上昇流が起こった場合、スラブからの距離の違いに応じて異なる温度圧力経路で上昇した高圧変成岩が、同一の地質帯において同時に産出する可能性を示唆するものである。