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[MIS13-P05] 変動帯における砕屑性堆積物の地球化学:大槌地域の事例
キーワード:砕屑性堆積物、HFS元素、大槌湾、北部北上帯
沿岸域の堆積物や河川堆積物の化学組成は、その起源となる地質構造や堆積過程における砕屑物の分別の影響を受けている。この化学組成と粒度分布は、様々な堆積過程を理解する上で不可欠である。大陸を流れる大規模河川の場合、沿岸域の堆積物の化学組成や粒度分布は一般的に、分別が進み細粒で泥岩の組成に集中する。一方で、日本のような活発な沈み込み帯に沿った島弧の河川の場合、河川の流路は短く、後背地の地質は多様である。島弧沿岸域の砕屑性堆積物について理解するためには、複雑な地質を持つ地域の地球化学的な研究事例を増やす必要がある。そこで、本研究では東北日本の前弧側に位置する三陸海岸地域の大槌湾の内外および湾内に流入する3つの河川から採取した堆積物試料の全岩地球化学分析および粒度分布の結果を報告する。また,大槌湾周辺は2011年3月11日の津波で大きな被害を受けたことが知られており、湾内の海底には津波堆積物が報告されている。今回の地球化学的分析により、これら3つの河川の堆積物は、それぞれの起源の岩石類の混合によってうまく説明されることが明らかになった。大槌湾内の堆積物の化学組成と粒度分布は、粗粒の石英が除去されていることを示唆するものだった。最も流域面積の大きい鵜住居川の堆積物は、細粒の苦鉄質鉱物である緑泥石やサポナイト、スメクタイトの存在度が増加することが示唆された。大槌湾の外側の海底堆積物には貝殻が多く、今回の結果の解釈は容易ではなかったが、湾口に近い地点から採取した海底堆積物は粒子が粗く、その化学組成は産地的に花崗岩や砂岩に近いことがわかった。一方で、より沖合の海底堆積物は粒子が細かく、より泥岩に近い組成を有している。本研究では、大槌湾内の堆積物に津波堆積物に特徴的な化学組成の分別や粒度分布は見られなかった。これらの結果から、津波堆積物も含めたプレート沈み込み帯に沿って発達する沿岸堆積物について理解するためには、その堆積物の起源となる後背地の地質の違いやそれらを構成する各鉱物の粒度分布を合わせて検討する必要がある。