16:15 〜 16:30
[MIS14-08] 準安定2液相分離合金を利用した熱エネルギー貯蔵
キーワード:熱エネルギー貯蔵、液相分離、浮遊法
1. はじめに
近年、熱エネルギー貯蔵が不安定な再生可能エネルギーの出力を安定化させる技術として注目を集めてきている1, 2)。金属などの物質の潜熱を利用して、大容量のエネルギーと熱として貯蔵できる可能性がある。高温で熱エネルギー貯蔵を貯蔵する際、高温での反応による熱エネルギー貯蔵材料の劣化が問題となる。そこで高温での安定相が被覆材となり、蓄熱部を保護できる相分離型の相分離型の潜熱型蓄熱材料が、高温でも熱を貯蔵できる有力な材料として期待されている3, 4)。この2相分離型の材料の熱貯蔵材料への応用には、その組織の制御と貯蔵可能なエネルギーの定量的な評価が必要である。本研究では2液分離型のFe-Cu系合金に着目し、ガスジェット浮遊装置を利用した相分離過程のその場観察および作製した試料の蓄熱性能評価を行ったので、その結果について報告する。
2. 実験方法
直径約2 mmのFeCu合金(Fe50Cu50、Fe60Cu40、Fe75Cu25)を密閉型ガスジェット浮遊装置内でAr-H2混合ガス雰囲気内下で浮遊させ、CO2レーザーを照射して融解させた。液相線温度を利用してWienの近似式で校正した2色放射温度計で試料の温度を測定した。融解後、レーザー照射を停止し、試料を冷却した。冷却時の相分離・凝固過程を高速度カメラで撮影した。回収した試料をDSCで測定し、その熱エネルギー貯蔵密度を評価した。
3. 実験結果および考察
ガスジェット浮遊させた溶融・凝固させたFeCu合金を冷却する過程において、凝固に伴うリカレッセンスに先立ち、冷却曲線の勾配が変化する屈曲点があることが分かる。この冷却過程を高速度カメラで表面観察を行ったところ、この温度で均一なFe-Cu溶融合金が2液に相分離していることが分かった。分離した液相が、表面に占める割合が大きくなる伴い、互いに合体しながら成長する。作製した試料を1000度まで加熱し部分融解させた時の融解熱をDSC測定したところ、Fe50Cu50およびFe60Cu40合金のエネルギー貯蔵密度はそれぞれとなり137 kWh m3、76 kWh m3、国際再生可能エネルギー機関が示す2050年度の開発目標であるエネルギー密度(50-85 kWh m3)1) よりも高いエネルギー密度を有することが分かった。
参考文献
1. IRENA, Innovation outlook: Thermal Energy Storage, International Renewable Energy Agency (2020).
2. T. Okazaki: Renew. Energ., 151 (2020) 563.
3. A. Rawson, E. Kisi, H. Sugo, and T. Fiedler: Int. J. Heat. Mas. Trans., 77 (2014) 395.
4. Odenthal, F. Klasing and T. Bauer: Energ. Proc., 135 (2017) 14.
近年、熱エネルギー貯蔵が不安定な再生可能エネルギーの出力を安定化させる技術として注目を集めてきている1, 2)。金属などの物質の潜熱を利用して、大容量のエネルギーと熱として貯蔵できる可能性がある。高温で熱エネルギー貯蔵を貯蔵する際、高温での反応による熱エネルギー貯蔵材料の劣化が問題となる。そこで高温での安定相が被覆材となり、蓄熱部を保護できる相分離型の相分離型の潜熱型蓄熱材料が、高温でも熱を貯蔵できる有力な材料として期待されている3, 4)。この2相分離型の材料の熱貯蔵材料への応用には、その組織の制御と貯蔵可能なエネルギーの定量的な評価が必要である。本研究では2液分離型のFe-Cu系合金に着目し、ガスジェット浮遊装置を利用した相分離過程のその場観察および作製した試料の蓄熱性能評価を行ったので、その結果について報告する。
2. 実験方法
直径約2 mmのFeCu合金(Fe50Cu50、Fe60Cu40、Fe75Cu25)を密閉型ガスジェット浮遊装置内でAr-H2混合ガス雰囲気内下で浮遊させ、CO2レーザーを照射して融解させた。液相線温度を利用してWienの近似式で校正した2色放射温度計で試料の温度を測定した。融解後、レーザー照射を停止し、試料を冷却した。冷却時の相分離・凝固過程を高速度カメラで撮影した。回収した試料をDSCで測定し、その熱エネルギー貯蔵密度を評価した。
3. 実験結果および考察
ガスジェット浮遊させた溶融・凝固させたFeCu合金を冷却する過程において、凝固に伴うリカレッセンスに先立ち、冷却曲線の勾配が変化する屈曲点があることが分かる。この冷却過程を高速度カメラで表面観察を行ったところ、この温度で均一なFe-Cu溶融合金が2液に相分離していることが分かった。分離した液相が、表面に占める割合が大きくなる伴い、互いに合体しながら成長する。作製した試料を1000度まで加熱し部分融解させた時の融解熱をDSC測定したところ、Fe50Cu50およびFe60Cu40合金のエネルギー貯蔵密度はそれぞれとなり137 kWh m3、76 kWh m3、国際再生可能エネルギー機関が示す2050年度の開発目標であるエネルギー密度(50-85 kWh m3)1) よりも高いエネルギー密度を有することが分かった。
参考文献
1. IRENA, Innovation outlook: Thermal Energy Storage, International Renewable Energy Agency (2020).
2. T. Okazaki: Renew. Energ., 151 (2020) 563.
3. A. Rawson, E. Kisi, H. Sugo, and T. Fiedler: Int. J. Heat. Mas. Trans., 77 (2014) 395.
4. Odenthal, F. Klasing and T. Bauer: Energ. Proc., 135 (2017) 14.