日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 古気候・古海洋変動

2023年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)、座長:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

10:08 〜 10:30

[MIS15-24] 微化石DX:放散虫の自動分類とハイスループット化の取り組み

★招待講演

*板木 拓也1宮川 歩夢1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:微化石、ディープラーニング、古海洋学

微化石の研究において、種の分類は避けては通れない作業のひとつであり、専門的な知識と経験を有した職人的な人材が顕微鏡を用いて膨大な時間と労力を費やして行っている。しかし、そのような専門家だけでの作業量には限界があり、また最近では人材の減少も懸念されている。一方で、高解像度のデータ解析が主流となりつつあり、大量の分析・解析が求められるようになっている。もはや専門家だけの手で全ての要求に応えることは困難となりつつある。
  この課題を克服することに期待されているのが人工知能(AI)である。近年、私たちの生活の中の様々な場面にAIが使われるようになり、いわゆるDX化(Digital Transformation)が促進されている。微化石研究においても、様々な化石群についてAIの学習法のひとつであるディープラーニング(深層学習)による自動分類の実験が行われるようになった。多くの論文は、AIによって微化石を種レベルで分類可能であることを示しているが、実用化のためには、分類精度の向上に加え、画像データ取得の効率化やハイスループット化が課題となる。
  産総研では、2017年にAIによる微化石自動分類・ピッキングシステムの実用化に向けた技術開発を開始し、2018年にこれを実用化した。「miCRAD system」と名付けられた本システムは、マイクロマニピュレーターを搭載したコンピュータ制御の自動顕微鏡にAIによる分類機能を持たせ、特定の種の微化石を自動で分類・ピッキング・集積することが可能であり、産総研では2台が運用されている。また、さらに大量の微化石画像データを瞬時にして取得するハイスループット化を目指し、2022年にはバーチャルスライドスキャナー(以降、スライドスキャナー)を導入した。スライドスキャナーは、主に医療分野で普及しつつある技術で、スライドのデジタル画像データ(バーチャルスライド)を取得し、ネットワークなどで世界中のユーザーと共有を図ることができる。本講演では、放散虫を例として、産総研におけるこれらのシステムの運用試験の結果と今後の展開について解説したい。