12:00 〜 12:15
[MIS15-30] 高時空解像度の地球科学的手法と演劇の現象学的還元を用いたサンゴとヒトの記憶の包括的復元
キーワード:サンゴ年輪、酸素同位体比、海水流動モデル、演劇、現象学的還元、ヒトと自然の関係性
サンゴは5億年の地球の歴史の中で絶滅と進化を繰り返しながら“強靭さと鋭敏さ”を武器に海洋と陸上、海底と星空といった境界域においてその分布を維持し豊かな生態系を支えてきた。一方で、ヒトは空間的な活動の広がりとともに文化・歴史を刻みながら社会変動を繰り返してきた。サンゴが個体の発生から群体を形成しやがてはサンゴ礁という地形を構築していく様は、ヒトが個から集団までの社会的な構成を世代を超えて維持発展する様と類似した時空間スケールを持つ。また、近年のヒトの活動は、サンゴ礁生態系や地球環境にまで影響を及ぼすに至り、サンゴとヒトは地球規模の“自然科学的”あるいは“社会科学的”環境変動にそれぞれに密接に関係しているのがわかる。
サンゴの鋭敏さと強靭さは、様々な環境の変動を鋭敏に記録するという役割を与えている。サンゴは骨格を付加的に成長させ年輪を刻みながら数百年間にわたって同じ場所で生き続ける。今生きているサンゴや昔生きていた化石のサンゴの年輪に沿って最新の分析技術や年代測定法を駆使して解析をすると過去から現在までの環境変化の履歴が蘇る。これらの非常に時空間解像度の高い環境記録は、ヒトの生活の場や時間の感覚、記憶、と調和したものになりうる。例えば、サンゴ年輪に沿った酸素同位体比の分析は、過去のある時点の月ごとの定量的な降水量や生活・農業用水を詳細に復元することができ、ある時期のヒトの記憶と直接的に比較することができる。ヒトの記憶や記載された古文書や歴史書は時として、主観的であり偏在的であるので、サンゴカレンダーやタイムカプセルは人と自然の関係性を客観性に評価するためにも有用である。
演劇は、様々な時代や場において、ヒトが生活している内的外的環境や世界によってヒトの個や集団の内部に起こる変化や葛藤を描くことができる人類古来の表現方法である。また、作劇から演出、観劇までをヒト自身が関わる過程を含んでいる。その過程を通じて、生活している環境や世界が自然に現れてくる状況が生まれ、ヒトの主観的な判断の条件やその構造を想像することができる。本研究では、サンゴの地球科学的アプローチと演劇の現象的還元手法を用いることにより、社会科学的かつ自然科学的な想像力を励起させ、過去から現在までの人と自然の関係性を復元し、予測が困難な未来においてのより良い人と自然の関わり方のイメージを共有するための手法を紹介する。
本講演では、奄美群島喜界島においてサンゴ礁研究者を含む多分野異文化からなる研究者、アーティスト、地域の人々による合同フィールドワークを行い、サンゴ年輪をはじめとする天然試料の分析と解析、水文学や古気象などによる自然・環境データを統合したデータベースの作成や集落における聞き取り調査などをもとに実証をされた総合的な研究成果の一端を紹介する。特に、サンゴ骨格の高解像度・高精度の地球化学的分析(例えば、酸素同位体比やストロンチウム/カルシウム比)と高時間空間解像度海水流動モデルの結果から明らかになる喜界島での高い空間スケールと時間解像度の自然科学的結果と第二次世界大戦後から日本に復帰する年であり旱魃があった1953年に喜界島の坂峰集落で起こった日常の出来事を組み合せることで、気候変動と社会変動の中にあるヒトの個や家族単位での伝承や歴史、文化、生活様式、人の感情や行動にどのような影響を与えていたかを考察するための演劇の作成のプロセスとそのインパクトについて議論をする。
サンゴの鋭敏さと強靭さは、様々な環境の変動を鋭敏に記録するという役割を与えている。サンゴは骨格を付加的に成長させ年輪を刻みながら数百年間にわたって同じ場所で生き続ける。今生きているサンゴや昔生きていた化石のサンゴの年輪に沿って最新の分析技術や年代測定法を駆使して解析をすると過去から現在までの環境変化の履歴が蘇る。これらの非常に時空間解像度の高い環境記録は、ヒトの生活の場や時間の感覚、記憶、と調和したものになりうる。例えば、サンゴ年輪に沿った酸素同位体比の分析は、過去のある時点の月ごとの定量的な降水量や生活・農業用水を詳細に復元することができ、ある時期のヒトの記憶と直接的に比較することができる。ヒトの記憶や記載された古文書や歴史書は時として、主観的であり偏在的であるので、サンゴカレンダーやタイムカプセルは人と自然の関係性を客観性に評価するためにも有用である。
演劇は、様々な時代や場において、ヒトが生活している内的外的環境や世界によってヒトの個や集団の内部に起こる変化や葛藤を描くことができる人類古来の表現方法である。また、作劇から演出、観劇までをヒト自身が関わる過程を含んでいる。その過程を通じて、生活している環境や世界が自然に現れてくる状況が生まれ、ヒトの主観的な判断の条件やその構造を想像することができる。本研究では、サンゴの地球科学的アプローチと演劇の現象的還元手法を用いることにより、社会科学的かつ自然科学的な想像力を励起させ、過去から現在までの人と自然の関係性を復元し、予測が困難な未来においてのより良い人と自然の関わり方のイメージを共有するための手法を紹介する。
本講演では、奄美群島喜界島においてサンゴ礁研究者を含む多分野異文化からなる研究者、アーティスト、地域の人々による合同フィールドワークを行い、サンゴ年輪をはじめとする天然試料の分析と解析、水文学や古気象などによる自然・環境データを統合したデータベースの作成や集落における聞き取り調査などをもとに実証をされた総合的な研究成果の一端を紹介する。特に、サンゴ骨格の高解像度・高精度の地球化学的分析(例えば、酸素同位体比やストロンチウム/カルシウム比)と高時間空間解像度海水流動モデルの結果から明らかになる喜界島での高い空間スケールと時間解像度の自然科学的結果と第二次世界大戦後から日本に復帰する年であり旱魃があった1953年に喜界島の坂峰集落で起こった日常の出来事を組み合せることで、気候変動と社会変動の中にあるヒトの個や家族単位での伝承や歴史、文化、生活様式、人の感情や行動にどのような影響を与えていたかを考察するための演劇の作成のプロセスとそのインパクトについて議論をする。