日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 古気候・古海洋変動

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (22) (オンラインポスター)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[MIS15-P22] 最終氷期以降の沖縄トラフ北部・中部における沿岸水の消長(予察)

*齋藤 京太1青木 智1 (1.海上保安庁)

キーワード:沖縄トラフ、最終氷期、水塊変動

最終氷期以降の沖縄トラフにおける水塊の変動は,浮遊性有孔虫の種組成・酸素同位体比や珪藻の種組成などを用いて復元されてきた.沖縄トラフ北端部の男女海盆周辺では,MIS3以降に沿岸水の影響を受けつつ,LGMから退氷期において沿岸水の影響が強くなったことが示されている(Xu and Oda, 1999; Ujiie et al., 2003; Ijiri et al., 2005).一方,沖縄トラフ中部における同様の復元では,MIS3から退氷期にかけて継続的に沿岸水の影響を受けていたことが示されている(Chang et al., 2008; 2009).
本発表では,沖縄トラフ内及び沖縄トラフ西側斜面の複数地点より採取された堆積物コアを用い,主に浮遊性有孔虫の種組成を基に,沖縄トラフ中部・北部の西側における沿岸水の消長について,予察的な結果を示す.
分析の結果,退氷期から完新世については,沖縄トラフ北部・中部両方のコアにおいて,(1) 沿岸水系の種の占める割合が減少すると同時に一方で黒潮系の種の占める割合が増加する傾向 (2) 4ka前後のPulleniatina Minimum Eventといった,先行研究と整合的な結果が得られた.一方,LGM以前に関しては,沖縄トラフ西側斜面から採取されたコアにおいて,沿岸系の種の多産から継続的に沿岸水の影響を強く受けていたことが示唆され,男女海盆よりも沖縄トラフ中部に近い傾向となった.
本発表のデータは時間解像度が低いこと,酸素同位体比などのプロキシを併用していないことから,現時点では水塊変動に関する詳細な議論は難しい.しかしながら,時間解像度を上げるとともに,周辺海域で別途採取された表層堆積物中の有孔虫組成や他のプロキシを併用することで,黒潮流軸の西寄りや沖縄トラフ北部・中部境界付近における沿岸水の消長をより詳細に復元できる可能性がある.