日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] 古気候・古海洋変動

2023年5月25日(木) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (22) (オンラインポスター)

コンビーナ:岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、長谷川 精(高知大学理工学部)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、小長谷 貴志(東京大学大気海洋研究所)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[MIS15-P27] 北西太平洋亜熱帯域における浮遊性有孔虫の季節変化

*橋本 優里1黒柳 あずみ2鈴木 淳3山岡 香子3、藤井 武史4、近藤 俊祐4、湊谷 純平5 (1.東北大学理学研究科、2.東北大学総合学術博物館、3.産業技術総合研究所地質調査総合センター、4.株式会社KANSOテクノス、5.独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構 (JOGMEC))

キーワード:浮遊性有孔虫、セジメントトラップ、北西太平洋亜熱帯域

浮遊性有孔虫は,石灰質の殻をもつ動物プランクトンで,殻の化学組成や群集組成に海洋表層の環境を記録する.このため,古海洋学的に重要視され,古環境解析に用いられている.より精密な環境復元には現生の浮遊性有孔虫の生態や,海洋環境との対応について把握する必要があるが,特に北西太平洋亜熱帯域では,浮遊性有孔虫の季節変動に関する報告はほとんどない.本研究では,北西太平洋亜熱帯域に設置された時系列セジメントトラップ試料を用いて,浮遊性有孔虫の沈降流量(フラックス)および群集組成の季節変化を,2週間の時間分解能で詳細に検討した.その結果,全22種の浮遊性有孔虫が確認され,うち11種が約93.5%を占めた.浮遊性有孔虫の総フラックスには明瞭な季節変化が見られ,12月と7月に大きなピークがみられた.また,各種はそれぞれ異なる季節変化を示し,このことから,浮遊性有孔虫の沈降流量は種によって異なる要因に規制されることが示唆された.いくつかの種のフラックスには類似した変動パターンが見られ,変動の傾向と,種ごとの相関をもとに主な浮遊性有孔虫11種を4グループに分類した.グループAは本研究で産出した浮遊性有孔虫の約66%を占める.亜熱帯種(Globigerinoidesruber,Trilobatus sacculifer,Globigerinoides conglobatus,Globigerinoides tenellus,Globoturbolotalita rubescens,Orbulina universa)で構成され,多くが共生藻を持つため,貧栄養な亜熱帯循環中央部という環境で多産したと考えられる.グループBは比較的深層に生息するGloborotalia属の3種で構成され(Globorotalia
truncatulinoides,Globorotalia scitula,Globorotalia scitula),一年に一度,夏季にピークを示す.このピークは繁殖時期を反映すると考えられる.グループCはGlobigerinita glutinataで,不規則な季節変化パターンを示す.これはG. glutinataの広い生息範囲によると考えられる.グループDはGlobigerinella siphoniferaで,年間を通じて低い値を維持し,明瞭な季節変化は見られなかった.また,北西太平洋亜熱帯域で行われた過去のセジメントトラップ実験との比較を行った結果,この海域での浮遊性有孔虫の群集組成は,亜熱帯水塊の影響を受け,フラックスの大きさは有機物量に支配されることが示唆された.