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[MIS15-P29] 北海道南部大沼とモンゴル北部サンギンダライ湖の湖成年縞の形成メカニズムの考察
キーワード:年縞、菱マンガン鉱、古気候
年縞は世界各地に200ヶ所以上確認されており(Ojala et al., 2012; Zolitschka et al., 2015),先カンブリア時代から新生代まで幅広い地質時代の地層からも見つかっている(e.g.,Hasegawa et al., 2022)。また,年縞は砕屑性や生物性,蒸発性など様々な組成を持ち(e.g.,Martin-Puertas et al., 2017),過去の気候帯分布を復元する有力なツールとなる可能性がある。本研究では,年縞の構成鉱物として稀少な菱マンガン鉱(Rhodochrosite)が日本で唯一見られる北海道南西部の大沼(Katsuta et al., 2020)と,モンゴル北部のサンギンダライ湖の湖底堆積物コアを対象として,湖成年縞の形成メカニズムの考察を試みた。研究に用いた試料は,大沼で2016年,2022年に掘削された16ONM03コア(90㎝)と22ONM01コア(全長27m,上部3m部を使用),そしてサンギンダライ湖で2019年に掘削された19SD04コア(6m)である。
北海道大沼で掘削採取した22ON01コアは,上部2mが黒灰色の粘土層,2~2.8mが黄褐色のラミナ発達粘土層,そして2.8~3.0mが茶褐色のシルト層からなる。ラミナ発達層準は,テフラ層と駒ケ岳の噴火イベントとの対比から,1640年∼1929年CEに対応すると考えられている(Katsuta et al., 2020)。この場合,平均堆積速度が約2.5 mm/yrとなり,ラミナ層厚の約2-3mmと一致することから,ラミナは年縞である可能性が高いことが分かった。また16ONM03コアのItrax分析結果を用いて,主要元素組成で主成分分析を行った結果,第1主成分はテフラ層の組成を,第2主成分はMn量の変動を反映していることが明らかになった。
次にモンゴル北部サンギンダライ湖の19SD04コアは,上部1.5mが完新世に堆積したラミナが発達する茶褐色の石灰質泥層とラミナ発達度の弱い黒灰色泥層の互層,1.5∼6mが最終氷期に堆積した緑灰色砂層からなる。土壌TOCの14C年代から,サンギンダライ湖のラミナも年縞である可能性が高い。19SD04コアのItrax元素組成データの主成分分析を行った結果,第1主成分は含水率を,第2主成分はCa, Srなどの炭酸塩鉱物が正因子,Fe Mn K Siなどの砕屑物が負因子を持つことが明らかになった。この第2主成分とラミナ発達部は良く対応しており,年縞の形成には表層生物生産に伴う湖表層水のアルカリ度の増大とカルサイト沈殿が関わっていると考えられる。
今後は大沼とサンギンダライ湖のラミナ発達部の微小領域分析を行い,年縞の形成メカニズムの考察を進めて行く。
北海道大沼で掘削採取した22ON01コアは,上部2mが黒灰色の粘土層,2~2.8mが黄褐色のラミナ発達粘土層,そして2.8~3.0mが茶褐色のシルト層からなる。ラミナ発達層準は,テフラ層と駒ケ岳の噴火イベントとの対比から,1640年∼1929年CEに対応すると考えられている(Katsuta et al., 2020)。この場合,平均堆積速度が約2.5 mm/yrとなり,ラミナ層厚の約2-3mmと一致することから,ラミナは年縞である可能性が高いことが分かった。また16ONM03コアのItrax分析結果を用いて,主要元素組成で主成分分析を行った結果,第1主成分はテフラ層の組成を,第2主成分はMn量の変動を反映していることが明らかになった。
次にモンゴル北部サンギンダライ湖の19SD04コアは,上部1.5mが完新世に堆積したラミナが発達する茶褐色の石灰質泥層とラミナ発達度の弱い黒灰色泥層の互層,1.5∼6mが最終氷期に堆積した緑灰色砂層からなる。土壌TOCの14C年代から,サンギンダライ湖のラミナも年縞である可能性が高い。19SD04コアのItrax元素組成データの主成分分析を行った結果,第1主成分は含水率を,第2主成分はCa, Srなどの炭酸塩鉱物が正因子,Fe Mn K Siなどの砕屑物が負因子を持つことが明らかになった。この第2主成分とラミナ発達部は良く対応しており,年縞の形成には表層生物生産に伴う湖表層水のアルカリ度の増大とカルサイト沈殿が関わっていると考えられる。
今後は大沼とサンギンダライ湖のラミナ発達部の微小領域分析を行い,年縞の形成メカニズムの考察を進めて行く。