10:45 〜 12:15
[MIS15-P30] 奄美大島における年輪酸素同位体比の年層内変動と総観規模の気象条件との相関分析
キーワード:年輪、酸素同位体比
近年の異常気象により気候変動への関心が集まっているが,日本の気象観測データは過去100年程度しかなく,長期的な変動を分析するには不十分である.そこで,さまざまな気象代替データを用いて過去の気候を復元することが行われている.その中の一つである樹木年輪は,試料の採取や保存の容易さから,様々な機関で研究が進められている.本研究では樹木年輪の酸素同位体比が相対湿度と負の相関を持つという関係を利用して,過去の気候の推定を行う.梅雨や台風といった相対湿度に大きな影響を与える降水イベントは1か月程度以下の短いスパンで発生する.そのため,年輪酸素同位体比から降水イベントを推定するためには高分解能の酸素同位体比データが必要となる.本研究の対象地域である奄美大島は本州に比べ温暖な時期が長く,樹木の成長期が長いため,樹木年輪にはより長い期間の気候が記録されている可能性がある.本研究ではその中でも特に年輪幅の広いサンプルの年輪を24分割し,セルロース酸素同位体比の詳細な年層内変動を測定し,気象観測データと比較することで,年輪内のどの部分が1年のうちのどの時期に相当するのかを検討する.
樹木年輪試料として鹿児島県奄美大島の有盛神社で生育していた樹齢約200年のリュウキュウマツ2個体から,気象観測データが得られる20世紀以降で特に年輪幅が広い計15年分の年輪を用いた.樹木の木口面の薄板を切り出し,セルロースを抽出した後,各年輪を生長方向に24分割し,分割したセグメントごとに同位体比測定用の試料を作成した.酸素同位体比の測定は名古屋大学環境学研究科に設置されている熱分解元素分析計と同位体質量分析計のオンラインシステム(TCEA-Delta V Advantage)を用いて行われた.実験から得られたセルロース酸素同位体比の年層内変動と,名瀬測候所で観測された相対湿度の3旬移動平均のグラフを重ね合わせ,樹木年輪の成長パターンの推定を行った.2つのグラフが視覚的に最も合致するように相対湿度の時間軸の調整をした.その結果,本研究で測定したリュウキュウマツの成長開始時期は3月下旬頃,成長終了時期は11月下旬頃と対応していることが分かった.しかし成長期の後半になると2つのグラフのずれが大きくなるサンプルが多く,年輪の成長の終了時期は年による変動が大きいと考えられる.
前半の梅雨の時期に比べ,後半の台風の時期において,相対湿度との対応が悪くなることが分かった.天気図が得られる1957年以降で年層内12分割の酸素同位体比データが得られている36年分を対象に天気図との比較から,これらについての検討を行う.相対湿度と酸素同位体比の対応関係を表すために,両者のデータの標準化を行い,それらを足し合わせた数値を新たな指数として設定した.この指数は値が大きいと,相対湿度が高いにもかかわらず酸素同位体比の値が高いことを示し,逆に値が小さいと相対湿度が低いにもかかわらず酸素同位体比の値が低いことを示す.各年の 8月と9月に台風が奄美近海の北緯20°-30°,東経120°-140°のエリアに存在する日数を数え,この指数との相関をとった結果,相関係数の値は0.45となり,両者の間には有意な正の相関が認められた.このようになった理由として,台風の発生個数や移動経路が奄美における降水の酸素同位体比と間接的に関連していることが考えられる.
樹木年輪試料として鹿児島県奄美大島の有盛神社で生育していた樹齢約200年のリュウキュウマツ2個体から,気象観測データが得られる20世紀以降で特に年輪幅が広い計15年分の年輪を用いた.樹木の木口面の薄板を切り出し,セルロースを抽出した後,各年輪を生長方向に24分割し,分割したセグメントごとに同位体比測定用の試料を作成した.酸素同位体比の測定は名古屋大学環境学研究科に設置されている熱分解元素分析計と同位体質量分析計のオンラインシステム(TCEA-Delta V Advantage)を用いて行われた.実験から得られたセルロース酸素同位体比の年層内変動と,名瀬測候所で観測された相対湿度の3旬移動平均のグラフを重ね合わせ,樹木年輪の成長パターンの推定を行った.2つのグラフが視覚的に最も合致するように相対湿度の時間軸の調整をした.その結果,本研究で測定したリュウキュウマツの成長開始時期は3月下旬頃,成長終了時期は11月下旬頃と対応していることが分かった.しかし成長期の後半になると2つのグラフのずれが大きくなるサンプルが多く,年輪の成長の終了時期は年による変動が大きいと考えられる.
前半の梅雨の時期に比べ,後半の台風の時期において,相対湿度との対応が悪くなることが分かった.天気図が得られる1957年以降で年層内12分割の酸素同位体比データが得られている36年分を対象に天気図との比較から,これらについての検討を行う.相対湿度と酸素同位体比の対応関係を表すために,両者のデータの標準化を行い,それらを足し合わせた数値を新たな指数として設定した.この指数は値が大きいと,相対湿度が高いにもかかわらず酸素同位体比の値が高いことを示し,逆に値が小さいと相対湿度が低いにもかかわらず酸素同位体比の値が低いことを示す.各年の 8月と9月に台風が奄美近海の北緯20°-30°,東経120°-140°のエリアに存在する日数を数え,この指数との相関をとった結果,相関係数の値は0.45となり,両者の間には有意な正の相関が認められた.このようになった理由として,台風の発生個数や移動経路が奄美における降水の酸素同位体比と間接的に関連していることが考えられる.