日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 地球科学としての海洋プラスチック

2023年5月26日(金) 10:45 〜 12:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)、座長:川村 喜一郎(山口大学)

11:15 〜 11:30

[MIS17-08] 沿岸で微細化したプラスチックはどこへ行く?:北西太平洋深海堆積物内のマイクロプラスチックの分布と推定される輸送過程

*土屋 正史1北橋 倫2中嶋 亮太1小栗 一将3川村 喜一郎4、中村 明夢5、中野 健吾6、前田 洋作1村山 雅史7、千葉 早苗8藤倉 克則1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.株式会社KANSOテクノス、3.南デンマーク大学、4.山口大学大学院創成科学研究科、5.西日本鉄道株式会社、6.株式会社フジヤマ、7.高知大学農林海洋科学部、8.北太平洋海洋科学機関)

キーワード:マイクロプラスチック、深海堆積物、海底地形

海岸に漂着した大きなプラスチックごみは、紫外線や熱、砂などの衝突による風化により微細化し、5ミリメートル以下のマイクロプラスチック(MPs)が形成される。その後、沖合に流出し沈降するため、深海底はMPsの集積地であると考えられている。房総半島沖の黒潮続流再循環域は太平洋ごみベルトの西側に存在し、表層には、ごみパッチを形成することが分かってきた。マクロごみの場合、表層に溜まったあとその直下の海底に沈み、これまで観測された中でも最大規模のごみの集積地が形成されていることも明らかになってきた。しかし、本海域におけるMPsの分布実態や挙動に関する情報は得られていなかった。
相模湾からプレート三重会合点までの海底地形と、房総半島沖を東進する黒潮と黒潮続流の存在、人口密集地に近接する海溝系および最大規模の海流の存在は、他の海域には見られない本海域の特徴である。このため、本海域では黒潮続流からの沈降だけではなく、相模湾からプレート三重会合点の海底に沿った輸送が深海堆積物へのMPs輸送に大きな役割を果たす可能性が高い。本研究では、相模湾からプレート三重会合点および深海平原の堆積物中のMPsを分析し、深海堆積物へのMPsの分布実態を把握するとともに、輸送過程を推測した。
試料は「よこすか(YK19-11)・しんかい6500」により、漸深海帯の相模湾、超深海帯のプレート三重会合点、深海帯の深海平原の3つの水深帯セッティングで海底堆積物をアルミ製プッシュコアにて試料を採取するとともに、最深部のプレート三重会合点では深海ランダーシステムに搭載した不撹乱採泥器で試料を採取した。採取した試料は、有機物や炭酸塩を除去したあと密度分離したMPsを顕微FTIRを用いてポリマーの数や種類とその頻度、形状を分析した。
解析の結果、MPsの数は相模湾やプレート三重会合点に比べて、黒潮続流再循環域直下の海底堆積物により多く存在する傾向が見られ、マクロプラスチックごみの挙動と類似している可能性が示唆された。また、粒径やアスペクト比は相模湾や三重会合点で大きく、深海平原で有意に小さかった。相模湾や三重会合点におけるポリマーの種類の特徴は、相模川などの河川や東京湾・相模湾の海洋表層と類似しており、沿岸域で沈降したMPsが乱泥流などにより海底を輸送されると考えられる。一方、深海平原のポリマーの種類は黒潮続流再循環域などの沖合表層のMPsの特徴と類似しており、深海平原においては主に表層からの沈降に依存していることが示唆され、水深帯セティング間でMPsの輸送経路が異なることが考えられる。