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[MIS19-P06] 日本海上越沖の海底深部掘削コアに見る炭酸塩コンクリーションの初期形成過程
キーワード:自生炭酸塩、コンクリ―ション、日本海、初期続成過程
海底下堆積物中の自生炭酸塩は、メタン酸化や硫酸還元、メタン生成を主とする有機物分解に伴うアルカリ度上昇によって沈殿し、地球史を通じて炭素循環に大きな影響を及ぼしてきた(Raiswell & Fisher, 2000; Schrag et al., 2013など)。陸上に露出した海成層から頻繁に産出する炭酸塩コンクリーションは、上記のプロセスによって形成されたと考えられているが、その形成速度や形成深度などの多くは十分に理解されていない。炭酸塩コンクリーションの形成過程を知るうえで、現世堆積物でコンクリーション形成の初期段階を観察することが重要であるが、報告例は乏しい。本研究では、日本海上越沖の海底深部掘削コアより見つかった、コンクリーション形成の初期段階と考えられる層準について報告する。コアは2022年9月に実施された海底深部掘削船ちきゅう航海(Expedition 809)において、参照地点C8008Aより採取された。海底下10~139 mの11層準において、半固結~固結状態で上下の泥層よりも明色な炭酸塩濃集層、もしくは球状のコンクリ―ション(厚さ2~10 cm)が見つかった。上下の泥層では炭酸塩含有量が10~32重量%であるのに対し、濃集層は31~61重量%と炭酸塩含有量の増加を示した。同層準では、上下の泥層に対し0~12%程度の孔隙率の低下と、数ミクロン程度の孔隙径の減少が見られた。スミアスライドでは、長さ10 μmの針状カルサイトが濃集層の構成粒子の大部分を占めているのが観察された。蛍光X線スキャナーによる分析では、炭酸塩濃集層でカルシウムが増加し、上下の泥層に向かってゆるやかに減少することがわかった。カルシウムのゆるやかな変化は2~3 cmの層厚内で見られ、これは固結した炭酸塩コンクリーションで従来認められていた”reaction front”(Yoshida et al., 2015)のおよそ10倍厚い。このことは、炭酸塩濃集層は陸上の固結した炭酸塩コンクリーションから推定されるよりも遅い成長速度で、数か月~半月程度で形成されたことを示唆する。今後は炭酸塩濃集層の無機炭素の起源や有機炭素含有量、間隙水の化学組成、および微生物の関与の有無を調べ、炭酸塩コンクリーションのより精密な初期形成モデル構築を目指す。本研究は、経済産業省のメタンハイドレート研究開発事業の一部として実施した。