日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] 惑星火山学

2023年5月23日(火) 09:00 〜 10:15 展示場特設会場 (3) (幕張メッセ国際展示場)

コンビーナ:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、座長:野口 里奈(新潟大学 自然科学系)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

10:00 〜 10:15

[MIS21-05] 地質調査手法の高度化のための地層の特徴量自動認識アルゴリズムの初期適用

*藤本 圭一郎1春山 純一1下司 信夫2野口 里奈3 (1.宇宙航空研究開発機構、2.産業技術総合研究所、3.新潟大学)

キーワード:地質調査、露頭、画像解析

本研究では、従来の露頭の記載・層序分類プロセス中の属人的な知識と経験に強く依存した手順を岩相特徴量の自動認識アルゴリズムによるコンピュータ処理に置き換えることで、効率的なその場調査手法の開発をおこなう。本研究の第一段階としては、地球上での地質調査を効率化させ、新しい発見をすることができる可能性を向上させる。第二段階としては、宇宙探査における月や火星の地下空洞探査において詳細データを取得する場所の自動選定やエッジコンピューティングによるデータ圧縮・高効率伝送のキー技術を開発し、効率的な自律探査システムを実現させる。

また、本研究の重要な特徴は宇宙探査、画像認識アルゴリズム及び火山学の専門家が分野横断的にすべて揃っていることである。医療画像などの分野で成熟期に入っている既存の画像認識アルゴリズムを地質調査に取り入れるだけでも大きな価値を生み出す可能性があり、逆に医療画像などの分野では問題となっていない課題を克服することで画像認識アルゴリズムのブレークスルーに繋がる可能性がある。

学習データ量を確保することが難しい自律宇宙探査機に本特徴量自動認識ソフトウェアを搭載すること、地質調査手法の高度化だけではなく適用範囲をできる限り広く確保することを目指している。また、特徴量の自動認識結果と専門家の認識結果とを比較し両者の一致度が良い場合には、そのアルゴリズムが用いている変数である画像要素や輝度や色情報、テクスチャ情報量、また最終的な特徴量の評価に至るまでのロジックを分析し、専門家の認識ロジックと一致するかの分析をおこなう。以上のことから大量の学習データを必要とし、内部ロジックの体系的な把握が難しい機械学習などは特徴認識の基本処理には原則として用いない方針である。

本アルゴリズム開発では医療画像や衛星画像の分野における先行研究を参考とし、画像要素としては岩石や各地層の境界線、輝度及び色情報を元に画像全体を小さい区画に細分化(セグメンテーション)して得られるセグメント、溶岩のように岩石生成時の溶岩流動の影響で外表面に現れる凹凸の稜線である特徴線を用いている。画像の前処理後にセグメンテーションをおこない、セグメントごとの色情報やテクスチャ特徴量の平均値などを用いたクラスター分類をおこなった後に必要に応じて隣接セグメントを結合し、そして最終的には層の厚み分布や不整合の存在箇所などの岩相特徴量を算出する。

初期適用として層構造に複雑な湾曲や不整合が見られない比較的単純な地層の事例として伊豆大島火山の地層大切断面露頭に露出する降下火砕物露頭を用い、層間境界線の画像認識をおこなった。明瞭な境界線のみならず、スコリア層の不明瞭な境界線についても画像強調や注目する方向や検出閾値を予め設定した輝度勾配によるエッジ抽出をおこなうことで認識することができた。

今後は、この特徴量自動認識アルゴリズムの堅牢性を様々な地層に対して検証し、大量の光学画像を元に広大な範囲の地層構造を統一的な基準で解析できる手法を構築していく。