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[MIS21-P05] 豪州・アンダラ溶岩チューブ洞窟を形成した溶岩流の温度と流速の推定
キーワード:溶岩流、溶岩降伏値、溶岩温度、溶岩速度
[はじめに]
アンダラ溶岩流は19万年まえのアンダラ火山の噴火により形成された溶岩流(図1,2)で最大長さ160km,平均傾斜角度0.3度の緩い斜面に形成され,最大高さ20m,最大幅32mの大空洞を擁する巨大溶岩チューブ洞窟システムを内蔵する.アンダラ火山の溶岩噴出温度は1170~1220度,珪酸重量分率は48.9wt%,粘性係数は10~30 Pa.s以上と言われている[1,2].先の2021年の報告[3]ではアンダラ溶岩流の降伏値を推定したが,ここでは,溶岩チューブ洞窟を形成したアンダラ溶岩流について溶岩チューブ洞窟形成時の温度及び溶岩流動時の温度及び溶岩流の粘性係数や流速の推定を試みた.アンダラ溶岩の粘性や降伏値の温度依存データは存在しないので三原山1951年溶岩流(珪酸重量分率は53wt%)の粘性や降伏値の温度依存データ[4]を用いた.
[三原山1951溶岩のデータを用いたアンダラ溶岩流の温度の推定]
三原山1951年溶岩流を使うと,溶岩流の粘性と降伏値fBと粘性ηBの温度依存式と溶岩流停止厚さは以下となる[4]:降伏値温度依存式:log10fB=12.67-0.0089θ(ここでθは摂氏温度, fBの単位はPa),粘性係数温度依存式: log10ηB =23.255-0.0181θ(ここでθは摂氏温度, ηBの単位はPa.s),溶岩流停止厚さ:hB=fB/ρgsinα(ここでρは密度(2500kg/m3),gは重力加速度,αは傾斜角度),溶岩停止厚さにさらに1~3mの水位をかさ上げして流速u= (H- hB)2[(ρg sinα)/2ηB]とレイノルズ数,ヘドストロム数等を求め層流か乱流かの判断をした(表1~6).
[推定結果の考察]
先の2021年の報告[3]でアンダラ溶岩チューブ洞窟から推定した降伏値(1400Pa~3400Pa)は表1からほぼ1025度から1100度の範囲にある.溶岩チューブ洞窟を形成するためには層流状態で十分な溶岩流の厚さが必要であり温度としては1025度から1100度とみられる.一方,噴出口近傍での溶岩温度が1200~1225度の場合一部乱流域も存在し得ることがわかった(表2~6). 図3に抵抗係数とレイノルズ数、ヘドストロム数による層流・乱流遷移の関係を示す。
参考文献:
[1]A.Atkinson,T.J.Griffin,P.J.Stephenson(1975):Bulltin Volcanologique, volume 39,pages 266-293(1975)
[2]Anne Atkinson(2010):Undara Volcano, North Queensland, Australia and its Lava Field – Lava Caves, Depressions and The Wall – a Possible Lunar Analogue ,Proceedings 14th International Symposium on Vulcanospeleology, 2010.
[3]本多力(2021): SVC30-P01豪州・アンダラ溶岩流と溶岩チューブ洞窟から得られる溶岩降伏値について,2021年地球惑星科学連合大会(JpGU2021)
[4]石原和弘,井口正人,加茂幸介(1988):数値計算による1986年伊豆大島溶岩流の再現,火山,第2集,第33巻,伊豆大島噴火特集号,S64-S76
アンダラ溶岩流は19万年まえのアンダラ火山の噴火により形成された溶岩流(図1,2)で最大長さ160km,平均傾斜角度0.3度の緩い斜面に形成され,最大高さ20m,最大幅32mの大空洞を擁する巨大溶岩チューブ洞窟システムを内蔵する.アンダラ火山の溶岩噴出温度は1170~1220度,珪酸重量分率は48.9wt%,粘性係数は10~30 Pa.s以上と言われている[1,2].先の2021年の報告[3]ではアンダラ溶岩流の降伏値を推定したが,ここでは,溶岩チューブ洞窟を形成したアンダラ溶岩流について溶岩チューブ洞窟形成時の温度及び溶岩流動時の温度及び溶岩流の粘性係数や流速の推定を試みた.アンダラ溶岩の粘性や降伏値の温度依存データは存在しないので三原山1951年溶岩流(珪酸重量分率は53wt%)の粘性や降伏値の温度依存データ[4]を用いた.
[三原山1951溶岩のデータを用いたアンダラ溶岩流の温度の推定]
三原山1951年溶岩流を使うと,溶岩流の粘性と降伏値fBと粘性ηBの温度依存式と溶岩流停止厚さは以下となる[4]:降伏値温度依存式:log10fB=12.67-0.0089θ(ここでθは摂氏温度, fBの単位はPa),粘性係数温度依存式: log10ηB =23.255-0.0181θ(ここでθは摂氏温度, ηBの単位はPa.s),溶岩流停止厚さ:hB=fB/ρgsinα(ここでρは密度(2500kg/m3),gは重力加速度,αは傾斜角度),溶岩停止厚さにさらに1~3mの水位をかさ上げして流速u= (H- hB)2[(ρg sinα)/2ηB]とレイノルズ数,ヘドストロム数等を求め層流か乱流かの判断をした(表1~6).
[推定結果の考察]
先の2021年の報告[3]でアンダラ溶岩チューブ洞窟から推定した降伏値(1400Pa~3400Pa)は表1からほぼ1025度から1100度の範囲にある.溶岩チューブ洞窟を形成するためには層流状態で十分な溶岩流の厚さが必要であり温度としては1025度から1100度とみられる.一方,噴出口近傍での溶岩温度が1200~1225度の場合一部乱流域も存在し得ることがわかった(表2~6). 図3に抵抗係数とレイノルズ数、ヘドストロム数による層流・乱流遷移の関係を示す。
参考文献:
[1]A.Atkinson,T.J.Griffin,P.J.Stephenson(1975):Bulltin Volcanologique, volume 39,pages 266-293(1975)
[2]Anne Atkinson(2010):Undara Volcano, North Queensland, Australia and its Lava Field – Lava Caves, Depressions and The Wall – a Possible Lunar Analogue ,Proceedings 14th International Symposium on Vulcanospeleology, 2010.
[3]本多力(2021): SVC30-P01豪州・アンダラ溶岩流と溶岩チューブ洞窟から得られる溶岩降伏値について,2021年地球惑星科学連合大会(JpGU2021)
[4]石原和弘,井口正人,加茂幸介(1988):数値計算による1986年伊豆大島溶岩流の再現,火山,第2集,第33巻,伊豆大島噴火特集号,S64-S76