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[MIS22-09] 彗星記録比較による土御門家の観測の実態把握
キーワード:天文学史、彗星
江戸期において継続的に天体観測を行っていたのは京都の土御門家や江戸の幕府天文方である。時代によってその観測精度に差はあるが、その実態を把握するためには独立した観測記録を日本とそれ以外の国の記録を比較することが有用である。安政五(1858)年に出現したドナティ彗星は、我が国では京都土御門家、江戸幕府天文方および大坂間家において観測され、その観測記録が残されている。また欧州でも記録が残されており、高度・方位が数値として記されている。これらの観測記録から、彗星の日々の赤経・赤緯値を導出して、観測精度の相互比較を行った結果、西欧の近代的な観測精度に比して我が国観測所の観測精度は一段落ちるものの、軌道の全貌を概ね把握できていたこと、またこの時の観測では日本においては土御門家の観測が一番優れていたことなどが分った(岩橋・北井・玉澤2022)。同様の比較は例えば土御門家にに対しては嘉永6年のクリンカーヒューズ彗星に対しても言える。本発表ではドナティ・クリンカーヒューズ両彗星を手掛かりに当時の土御門家の観測の実態を探る。