日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 火山学と気象学の融合

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、常松 佳恵(山形大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[MIS23-P02] 疑似流体置換法による軽石質なサブミリ火山灰粒子の密度測定の試み

*竹内 晋吾1石毛 康介1上澤 真平1諏訪 由起子2 (1.一般財団法人 電力中央研究所、2.株式会社 セレス)

キーワード:火山灰粒子密度、密度測定、降灰、軽石、空隙率、疑似流体置換法

火山灰の密度は大気内での粒子沈降速度を支配する物性の一つであり、過去の研究では測定が試みられてきた。火山灰粒子の中で軽石質粒子は空隙率に依存し粒子密度が大きく変わるため、特に重要な研究対象となってきた。これまでの研究では軽石質火山灰の粒子密度は粒径が小さくなるほど大きくなるとされ(Cashman and Rust, 2016)、噴煙拡散モデルでも考慮される場合がある(萬年, 2013)。

 しかしながら軽石質なサブミリ火山灰粒子の密度測定は確立した技術によってデータが十分に得られているとはいえない。その理由には密度測定の際に重要な体積測定の困難がある。過去の研究では下記の方法により体積測定が行われている。石英砂を疑似流体としてメスシリンダーを用いたサブミリ火山灰粒子の体積測定、あるいは既知体積の容器にサブミリ火山灰粒子を充填し、充填率を仮定することによる体積測定の例がある(Manville et al., 2002)。Eychenne and Le Pennec (2012)では、粒子の空隙への浸水が顕著には起こらないことを仮定し、水ピクノメトリーにより体積測定が行われた。その他、画像による粒子径分布測定装置を用いた粒子体積の推定も試みられている(Trafton and Giachetti, 2021)。いずれの方法でも、一粒ではなく多数の粒子の体積(粒子群体積と呼ぶ)を測定し、平均値を得ている。

 本研究では疑似流体置換法による体積測定を軽石質なサブミリ粒子に適用することを構想している。福徳岡ノ場2021年噴火漂流軽石を対象に疑似流体置換法を用いた体積測定技術を筆者らは開発し、センチサイズの粒子体積だけでなく、ミリサイズの粒子群体積の測定を行ってきた(竹内ほか, 2022)。疑似流体置換法による測定は上記のManville et al. (2002)の研究と同様の発想であるが、本研究では試料投入前後での擬似流体体積を精密に測定し、疑似流体の充填の精密な制御が可能なMicromeritics 製GeoPyc1365により行っている。その際、粒子間摩擦が低減された特殊な粉体(DryFlo)を疑似流体として用いている。

 予察的な検討では、均質性が高く、空隙を含まないガラスビーズ・ナイロンビーズ・人工結晶などを用いて、疑似流体置換法によるサブミリ粒子群体積測定の可能性を探っている。様々な粒径・形状のサブミリ粒子に対して疑似流体置換法による体積測定を行い、より真値に近い測定値と考えられるガス置換法による体積測定の結果と比較している。現在までの結果では、疑似流体として用いられる粉体(64–250 μm粒径)と試料粒子の粒径が近づいてくると、疑似流体置換法で得られた試料体積は過剰見積もりとなり、試料粒子の粒径減少と共に確度が悪くなることが判明した。しかし、その精度は比較的良好で、適切な補正式が得られればサブミリ粒子の粒子群体積測定と誤差の評価が可能と考えている。

発表では、人工粒子だけでなく、天然の降灰堆積物中の軽石質粒子に対する測定の試みについても触れたい。本研究は粒子密度測定にとどまらず、“火山灰ポロシメトリー”を目指している。その先にはマグマ学的特徴と火山灰密度特性の関係、火山灰粒子の大気や水中での挙動、火山灰粒子からの脱ガスと噴煙ダイナミクスの関係といったテーマがある。