日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 火山学と気象学の融合

2023年5月23日(火) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:佐藤 英一(気象研究所)、常松 佳恵(山形大学)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/23 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[MIS23-P09] 2022年1月のトンガ海底火山噴火発生時に日本上空で観測された内部重力波

*田中 健路1、村上 太一1 (1.広島工業大学)

キーワード:火山噴火、内部重力波、ひまわり8号、火山性気象津波、ヘルムホルツ振動数

2022年1月15日に発生した南太平洋のフンガ・トンガーフンガ・ハアパイ火山の噴火に伴い、ラム波やペケリス波などの大気波が全球的に伝播した。これらの大気波の伝播と共に0.3~5hPa程度の振幅の海面気圧微変動が生じ火山性気象津波が発生、世界各地でで数10cm程度、局地的には1mを超える潮位変化が観測された。日本沿岸においては、ラム波通過による第1波検出より2時間以上遅れた2022年1月15日23:00~1月16日3:00(日本時間)頃を中心に最大波が到達しており、同時間帯において周期10~20分程度、振幅0.1~0.3hPa程度の気圧微変動が地上気象観測データより捉えられている。これに対応する上空の大気波の解析を情報通信研究機構のひまわりクラウドに所蔵されている静止気象衛星ひまわり8号赤外画像を用いて行った。今回、解析対象の波長帯は赤外域のBand-07~Band-16の10チャンネルで時間間隔2.5分格子点間隔0.02度の赤外輝度温度分布に変換済みのデータを使用した。Otsuka(2022)の方法に基づき赤外輝度温度の時間2回微分を求めた後に、平面2次元バンドバスフィルターにより、水平方向0.3~2.5度の波長帯の成分を抽出した。

噴火から6~8時間後にBand-07~Band-16までの全チャンネルで5~10μKs-2 オーダーのラム波通過に伴う赤外輝度温度の揺らぎが検出された。それに後続する赤外輝度温度の揺らぎとして、噴火から9~12時間後の時間帯で、Band-12とBand-08の2バンドのみ、ラム波と同様の赤外輝度温度の揺らぎが日本上空を通過している様子が捉えられた。Band-12は対流圏下層と対流圏界面から成層圏下部の2高度の応答を受ける。対流圏下層に強い応答特性を持つBand-13との差分を取ると、後続波の波状パターンがBand-12単独の解析結果より明確に抽出することができた。この結果を基に、後続波の特性を解析したところ、対地位相速度 190~210m/s、周期600~900秒程度であり、波面は火山からの視線方向に対し時計回りに10~15°時計回り(北より)に転向していた。後続波の対地速度ベクトルから日本の上空の高層気象観測データより得られる対流圏界面付近の水平風ベクトルを差し引くと、火山からの視線方向とほぼ一致する240~250m/sの速度ベクトルが取得された。日本上空の高層気象観測データより、ヘルムホルツ方程式の解の振動数の2乗(n2)の高度分布を取ると、200~100hPaや300~400hPaの気層を中心に低周波内部重力波モードを示す n2>0 となる層が出現しており、それぞれ、Band-12、Band-08のピーク応答域と一致している。Band-12とBand-13の赤外輝度温度の時間2階微分の差分を周期600秒として気圧振幅に換算すると0.5~0.7hPaとなり、海面気圧変動の2~3倍程度であった。

今回検出された火山噴火の後続波としての内部重力波が日本の南側の太平洋上、フィリピン海上でプラウドマン共鳴を引き起こしながら徐々に波高が増大し、更に内湾の固有振動周期に付近の振動周期を有することで、日本の太平洋岸で急激な波高の増大につながった可能性が考えられる。