日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 大気電気学:大気電気学分野での高エネルギー現象

2023年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 オンラインポスターZoom会場 (7) (オンラインポスター)

コンビーナ:芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、長門 研吉(高知工業高等専門学校)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

13:45 〜 15:15

[MIS24-P04] 2021年12月30日に金沢市で観測された5連続TGFのガンマ線と電波解析

*大口 真奈里1中澤 知洋1ウ ティン2和田 有希3大熊 佳吾1王 道洪2辻 結菜1、大宮 悠希1安藤 美唯1榎戸 輝揚4篠田 太郎1 (1.名古屋大学、2.岐阜大学、3.大阪大学、4.京都大学)


キーワード:雷ガンマ線、雷放電、電波、高エネルギー大気物理学、大気電気学

雷は身近な現象であるが、未解明の点も少なくない。雷ガンマ線は雷雲内で加速された相対論的電子からの制動放射ガンマ線であり、雷放電と同時に瞬間的に放射するTerrestrial Gamma-ray Flash (TGF)と、雷雲そのものが数分にわたってガンマ線を放射する Gamma-ray Glowが知られている。その起源は雷雲中の静電場で加速して雪崩増幅する高エネルギー電子とされているが、これら2種の現象が雷雲中のどこでどのように発生しているかは未解決の課題となっている。我々は GROWTH (Gamma-Ray Observation of Winter Thunderclouds) 実験に参加し、電子加速域の場所を探っている。2021年度の冬季も、金沢市において、大型コリメータ検出器GOOSE (Gamma-ray Orientation Observing System with Electron-monitor)2台や、中型シンチレータ検出器 MaGaMo (Main Gamma-ray Monitor)数台など設置し、冬季の観測を行った。

2021 年12 月30 日04:08:34(JST)頃に、石川県警察学校、いしかわ子ども交流センターに設置されたGOOSE検出器2台と、石川県立泉丘高等学校、金沢大学附属高等学校、金沢大学に設置された中型検出器3台で、TGFが検出された。検出当時、これら5台のガンマ線検出器のある一帯は、毎時 5-20 mmの降水量があり、これらのガンマ線検出器群のおよそ3 km 北西ではGamma-ray Glow が観測されていた(2022 JpGU 鶴見講演)。岐阜大の雷放電検出システム FALMA (Fast Antenna Lightning Mapping Array)と DALMA (Discone Antenna Lightning Mapping Array) を用いて放電の様子をみたところ、Gamma-ray Glow が停止すると同時にこの北西領域を中心に雷放電が始まっていた。5つのガンマ線検出器のデータ解析から、04:08:34.868-04:08:34.873 間に5連続でTGFが発生していた。通常TGFは単発、または2-3 連続程度であり、本イベントは特異である。ガンマ線検出器は一部サチュレーションしているものの、各TGFの始まりと終わりはほぼ計測できている。2−4番目のTGFの継続時間は~100 μs であったが、1番目は400 μs、5番目は200 μsと長かった。さらにガンマ線と電波データを比較した結果、TGF の発生と同時刻に遅い放電電波パルスが存在しており、その発生場所を計算すると、我々のガンマ線検出器の上空付近であった。これは同時に継続していた 3 km 北方の放電とは独立した動きであり、放電のステップドリーダーが発達している箇所が必ずしもTGFの起源ではないことを示している。