日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2023年5月26日(金) 09:00 〜 10:30 オンラインポスターZoom会場 (4) (オンラインポスター)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)、中島 健介(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/25 17:15-18:45)

09:00 〜 10:30

[MTT37-P01] 色々な地球物理学的現象が励起する大気ラム波の特徴

*中島 健介1 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード:大気ラム波、天体衝突、火山噴火、大気自由振動


1. はじめに

昨年1月にトンガ海底火山噴火に伴って大振幅の大気ラム波が励起されて地球を数回にわたり周回したことが観測されたことは記憶に新しい。この様に明瞭なラム波は過去にも大規模な火山噴火、津波、核実験、隕石落下に伴って観測されている。一方、これらの様に単発的なものではなく、常時的に励起されていることも知られている。この発表では、単発的、常時的なものの両方に注目して、幅広い地学現象によるラム波の励起について考察する。

2. 大気ラム波の定義

大気ラムとは、広い意味において、地面に捕捉され静水圧的な鉛直構造をもつ大気振動である。水平方向の伝播特性としては、コリオリ力が関与しない水平構造(重力波的)の場合にはほぼ音速で伝播するが、惑星規模の構造を持ちコリオリ力が関与する(ロスビー波的)場合には位相速度は遅くなる。後者は特に「自由振動ロスビー波」と呼ばれることが多い。

3. 励起の符号

ラム波の符号は、ソースが静水圧調節の過程で作る大気下層圧力偏差で規定される。具体的には、津波や地殻変動による大気下端の上昇はプラスのラム波、大気下層の加熱や火山ガスの放出はプラスのラム波を作るが、鉛直運動量ソース(固体物質による引きずりなど)はラム波を励起しない。

4. 励起の時空間構造

火山爆発など時空間的に局在するソースは同心円状に広がる波面のラム波を励起する。一方、全球的に分布する励起源、たとえば、積雲の中での凝結加熱による励起は、波数空間に展開して考察する方が良い。

5. 具体例

局在したソースが励起するラム波として火山および隕石衝突、全球的に分布するソースが励起するラム波として大気自由振動の常時励起を考察する。隕石衝突によるラム波の詳細に関しては、プラネタリーディフェンスに関するセッション M-ZZ45 での発表も参照されたい。

謝辞:本研究は MEXT 科研費 JP21K21353, JSPS 科研費 JP22K18872 の助成を受けて行った。