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[MTT38-P02] 蒸発実験とシチリア島塩田から採取した石膏および塩水試料を用いた石膏形成時の硫黄同位体分別の推定
キーワード:硫黄同位体、海水蒸発実験、蒸発岩、石膏
硫黄同位体比は海洋の硫黄循環や酸化還元環境を検討するために重要な指標となる。過去の海水の硫黄同位体比を復元するための試料として蒸発岩、重晶石、炭酸塩岩が用いられている。特に、海水から直接沈殿する蒸発岩は沈殿時の海水の情報を記録する。主要な蒸発岩の一つである石膏(CaSO4・2H2O)は海水の硫黄同位体比を復元する際の重要な試料である。先行研究によって硫黄同位体比は石膏沈殿時に海水と石膏の間で同位体分別を起こすことが報告されている。この分別の大きさは石膏から過去の海水の硫黄同位体比をより正確に復元する際に重要となる。しかし、実験によって異なる水温での分別の違いなどの詳細について検討している研究は少ない。
そこで本研究では、蒸発実験試料と天然の試料を用いて異なる温度での硫黄同位体分別について検討した。蒸発実験では自然環境下で石膏が形成する際に想定される海水温に対応するため、水温を25℃および40℃に保った状態で蒸発を進行させた。蒸発の進行によって析出した石膏と塩水試料を採取した。また、天然試料はイタリアのシチリア島の北西端部にあるトラパニ塩田(採取時の水温29-30℃)から石膏試料と塩水試料を採取した。石膏試料と塩水試料は一度Milli-Q水で溶解、希釈等を行い硫酸バリウムとして再沈殿させ、海洋研究開発機構横須賀本部のEA-IRMSで硫黄同位体比を測定した。これらの測定結果から異なる水温での石膏沈殿時の硫黄同位体分別を推定した。まず、実験試料と天然試料の比較を行い実験環境下と自然環境下で同位体分別の大きさに違いが生じるか確認した。その結果、蒸発の進行に伴う同位体比の変動については差が認められたものの、両者の同位体分別の大きさ(実験試料:1.45±0.23 ‰、天然試料:1.60±0.62 ‰)には大きな違いは見られなかった。次に、異なる水温での硫黄同位体分別について検討を行った。その結果、同位体分別の大きさ水温が異なる場合でも不確かさの範囲内で一致した(25℃:1.46±0.17 ‰、40℃:1.44±0.27 ‰)。このことから、通常の蒸発岩形成環境下で想定される海水温の範囲では石膏沈殿時の硫黄同位体分別は大きく変化しないと考えられる。本研究の結果により、石膏を用いた海水硫酸の硫黄同位体比復元がより正確となることが期待される。本発表では、蒸発実験試料および塩田試料の硫黄同位体比測定結果とそこから推定された同位体分別の大きさを報告する。
そこで本研究では、蒸発実験試料と天然の試料を用いて異なる温度での硫黄同位体分別について検討した。蒸発実験では自然環境下で石膏が形成する際に想定される海水温に対応するため、水温を25℃および40℃に保った状態で蒸発を進行させた。蒸発の進行によって析出した石膏と塩水試料を採取した。また、天然試料はイタリアのシチリア島の北西端部にあるトラパニ塩田(採取時の水温29-30℃)から石膏試料と塩水試料を採取した。石膏試料と塩水試料は一度Milli-Q水で溶解、希釈等を行い硫酸バリウムとして再沈殿させ、海洋研究開発機構横須賀本部のEA-IRMSで硫黄同位体比を測定した。これらの測定結果から異なる水温での石膏沈殿時の硫黄同位体分別を推定した。まず、実験試料と天然試料の比較を行い実験環境下と自然環境下で同位体分別の大きさに違いが生じるか確認した。その結果、蒸発の進行に伴う同位体比の変動については差が認められたものの、両者の同位体分別の大きさ(実験試料:1.45±0.23 ‰、天然試料:1.60±0.62 ‰)には大きな違いは見られなかった。次に、異なる水温での硫黄同位体分別について検討を行った。その結果、同位体分別の大きさ水温が異なる場合でも不確かさの範囲内で一致した(25℃:1.46±0.17 ‰、40℃:1.44±0.27 ‰)。このことから、通常の蒸発岩形成環境下で想定される海水温の範囲では石膏沈殿時の硫黄同位体分別は大きく変化しないと考えられる。本研究の結果により、石膏を用いた海水硫酸の硫黄同位体比復元がより正確となることが期待される。本発表では、蒸発実験試料および塩田試料の硫黄同位体比測定結果とそこから推定された同位体分別の大きさを報告する。