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[MZZ39-02] 生物圏と精神圏:生物地球化学の草創期におけるヴラジーミル・ヴェルナツキイの科学論・科学思想
キーワード:生物地球化学、生物圏、精神圏、ヴラジーミル・ヴェルナツキイ、エピステモロジー、科学思想
「生物圏(Bioshere)」が今日のグローバル・エコロジー論の中心的な概念の一つであり、また地球化学と生物地球化学が現代の地球科学の理論的基礎であることに異論の余地はないだろう。20世紀前半、新科学の概念化と体系化の両面で先駆的な仕事をしたのが、ヴラジーミル・ヴェルナツキイ(Vladimir Ivanovich Vernadskii、1863-1945)である。今日、「生物圏」の概念と地球化学・生物地球化学に基づくビッグ・ヒストリーの構築過程は、20世紀の「科学革命」ともみなされることもある。ジャック・グリンヴァルドが剔抉するように、この認識論的転回は「ヴェルナツキイ革命」と呼ばれることがある。
ヴェルナツキイの社会的影響力が、狭義の科学研究から公共圏へと波及したのは、彼の知的探求の偶然の副産物ではなかった。優れた歴史家でもあったヴェルナツキイは、科学と科学的思考をめぐる研究に基づき、「生物圏」の科学的探求がもたらしうる自然像の認識論的転回を明確に企図していたのである。「精神圏(Noosphare)」をめぐる文明論的な叙述も、人間の科学的思考に対する透徹した彼の批判的思考を考慮しなくては、その思想的潜勢力を見誤る。ここでは、ロシア語圏以外ではあまり語られてこなかったヴェルナツキイの科学論・科学思想に着目し、思想的な可能性を検証する。
ヴェルナツキイの社会的影響力が、狭義の科学研究から公共圏へと波及したのは、彼の知的探求の偶然の副産物ではなかった。優れた歴史家でもあったヴェルナツキイは、科学と科学的思考をめぐる研究に基づき、「生物圏」の科学的探求がもたらしうる自然像の認識論的転回を明確に企図していたのである。「精神圏(Noosphare)」をめぐる文明論的な叙述も、人間の科学的思考に対する透徹した彼の批判的思考を考慮しなくては、その思想的潜勢力を見誤る。ここでは、ロシア語圏以外ではあまり語られてこなかったヴェルナツキイの科学論・科学思想に着目し、思想的な可能性を検証する。