日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] オンラインポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ39] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2023年5月22日(月) 10:45 〜 12:15 オンラインポスターZoom会場 (9) (オンラインポスター)

コンビーナ:矢島 道子(東京都立大学)、青木 滋之(中央大学文学部)、山田 俊弘(大正大学)、山本 哲

現地ポスター発表開催日時 (2023/5/21 17:15-18:45)

10:45 〜 12:15

[MZZ39-P05] マリ―・ストープスと保井コノー日本の古植物学の嚆矢

*矢島 道子1 (1.東京都立大学)

キーワード:マリー・ストープス、保井コノ、藤井健次郎

マリー・ストープス(1880-1958)は、1902年ロンドン大学より、女性として初めて理学博士を植物化石(鉱化化石)の研究で取得した。鉱化化石というのは、地層中に含まれる硬い巨礫のようなものである。これを切断し、薄い薄片を何枚も作って、顕微鏡で観察し、もともとの植物を復元する、前処理に手がかかり、忍耐のいる研究対象である。多くの植物研究者はあまりやろうとしない。手のつけられていない分野として残っていたようだ。1903年、ストープスは、ミュンヘン大学に留学して研究を続けた。ここで、銀杏の研究のために日本から留学してきた藤井健次郎(1866-1952)と恋仲になる。ストープスは1904年にマンチェスター大学の講師となった。藤井はマンチェスターのストープスを訪れていたが、東京帝国大学理学部の植物学教授となって帰国した。1907年、ロンドン王立協会の奨学金をえて、ストープスは藤井を追う形で日本にやってくる。被子植物の花の化石研究が目的である。その後、藤井とも、藤井の娘とも、不仲になり、ストープスは帰国した。その後、花の研究はしていないが、日本での植物化石研究は藤井と共著で出版している(Stopes and Fujii, 1920)。
 日本最初の理学博士である保井コノ(1880-1971)はストープスと誕生年がひとしく、研究対象も鉱化化石で同じであり、両者とも共同研究者として、あるいは、指導教官・学生として藤井健次郎教授と関係している。保井はストープスを知らないと言明しているが、関係はあるはずだ。