日本地球惑星科学連合2023年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ40] 再生可能エネルギーと地球科学

2023年5月24日(水) 15:30 〜 16:45 105 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:大竹 秀明(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 再生可能エネルギー研究センター)、野原 大輔(電力中央研究所)、島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)、宇野 史睦(日本大学文理学部)、座長:島田 照久(弘前大学大学院理工学研究科)


16:30 〜 16:45

[MZZ40-05] 極端高残余需要イベントの気象・気候要因とその将来変化 ~無光無風による再エネ低出力イベントと電力需要~

*大庭 雅道1、坂東 茂1、 菅野 湧貴1 (1.電力中央研究所)

キーワード:変動性再生エネルギー、極端高残余需要、無光無風、電力需給逼迫、エネルギー気象学、気象パターン

変動性再生可能エネルギー(VRE)の高い普及率の下では、無光無風などによるVRE低出力イベントの発生により、電力需要と供給がアンバランスになることでエネルギー供給の途絶が引き起こされる可能性がある。本研究では、歴史的に再構築された長期のVRE発電出力量と電力需要を用いて、極端に高い残余需要(RL:需要からVRE出力を差し引いた量)事象と気象・気候の関係性を調査した。また、簡易なVRE導入量の将来目標シナリオ3つを用いて、VRE設備容量の変化が気象・気候との関係性に与え得る影響も調査した。その結果、現在のVRE導入レベルでは、高RL事象は冬季に見られるが、VREの導入量増加により、冬季と夏季の差は縮まることがわかった。一方で、日・週スケールでのRLの変動性は増加する。
高RL事象に関連した冬の気象パターン(WP)を分析するために、大気再解析データから得られた過去の大気循環場に自己組織化マップを適用した。VREの導入レベルが低い(現在)条件下では、高RL事象は、西高東低によるコールドサージ型のWPと関連していることがわかった。しかし、VRE導入レベルの高い将来条件下では、高RL事象の発生要因が南岸低気圧型のWPへと変化していく結果を示した。一方、高RL事象の発生頻度には大きな年々変動があり、現在は冬季モンスーンに関連した気候変動と強く関連しているが、この関係はVRE導入量の増加とともに大きく弱まる。これは、VRE発電出力量と電力需要の関係に対するWP依存性に起因するものであることが示された。将来の条件下で電力の安定供給を維持するためには、電力需給の気象条件への依存性を理解・考慮して電力システム設計・VRE配置を行うことが重要である。