15:30 〜 17:00
[MZZ43-P12] 食べることに主眼を置いた子ども向け成層火山作製実験の試み~チョコビスケット火山~
キーワード:火山実験、食品、子供達、教育、美味しい
Covid-19の感染拡大により、箱根ジオパークが行う学校教育の機会も減少している。そこで当ジオパークでは、2020年以降家庭でもジオパークについて楽しく学べるパンフレットを作成し、エリア内の2市3町の公立小学校4~6年生に配布している。本火山実験は2022年のパンフレットに記載した(倉科,2022)もので、ここではその後の実践を含めて報告する。
本実験で参考としたキッチン火山実験は、身近な材料で火山現象を再現する事が特徴で、子ども達への火山教育としても有用性が高い。「世界一おいしい火山の本」(林,2006)は、子ども向けに楽しく食べられる実験を書いた本として有名である。これらの実験の主題は、科学的な裏付けに基づく火山現象の忠実な再現で、実験後の状態は食欲をそそる食品というより、食材の集合体で、後片付けでは食品の無駄のない回収に注力している。
本実験では上記過程を逆に辿り、完成後に食欲をそそる食品であることからスタートし、火山現象の中で伝える内容(下記下線部)を限定した実験を構築した。火山現象は乱雑さが増大する過程であるので、乱雑さが減少して最終的に1つの食品になることは大きな矛盾であるが、この点については参加者の子どもにわかる範囲で説明をした。しかし、食材を使用する以上、実験後の食品としての完成度は重要であり、食品ロスの観点からも実験後にそのまま食べられる調理実習的な実験もあってしかるべきであると考える。現状、ジオガシキッチン教室(ジオ菓子旅行団)のようなお菓子を完成させることに特化した事例はあるが、火山実験では見当たらない。本実験では、子どもだけでも手軽に安価に食材を集め、楽しく作って食べられる実験を目指した。
【実験:ビスケットのトッピングとして成層火山を作る】火山噴出物を3つの食品で表現し、成層火山を作る実験で、実践講座を2022年 5 月と 11 月に行った。溶岩は湯煎したチョコペン(アとする)、粗粒火砕物(軽石など)は砕いたビスケット(イとする)、細粒火砕物は粉砂糖またはココアパウダー(ウとする)を用いる。火山噴出物には、液体状のものとバラバラになった固体状のものがあること、後者には様々な大きさがあることを伝える。まず始めに、ビスケット(直径4cm程度)を1枚、基盤岩として紙皿に置く。山頂火口での噴火を想定し、アの1本分をビスケットの中央部に絞り出し、冷えて固まる溶岩の挙動として観察させるとともに、ベースとなる山体を作製する。その後、火砕物に見立てたイ、そしてウを積もらせる。さらにア→イ→・・・と交互に降り重ねていくことで火山が噴火で成長する様子を観察させる。火砕物はイのみでも構わないが、層の数を増やす事、味のバリエーションを増やす事を目的に使用した。食べる前に包丁で半分に切断して断面に地層ができていることを観察させる。11月は家庭科を学習していない低学年の小学生も参加し、保護者を含めて19名が実験を行い、実際にできるのか確認した。
【実践結果】 5月の実験では、チョコレートがきれいに広がり、ベースとなる山体を形成した(Fig.1 ①)。ア~ウを順番に積み上げると、頂上からチョコレートが流れやすい方向に流れたり(Fig.1 ④)、頂上に溶岩ドームができたりする現象が観測された(Fig.1 ⑥)。バランスを崩して「山体崩壊」を再現したものもあった(Fig.1 ⑦)。しかし、最終的には全員が独自の美味しそうな成層火山を完成させた(Fig.1⑤)。 断面では、3 種類の層が交互に重なっている様子が観察された(Fig.1⑧)。火山は噴火と共に成長すること、内部に層構造があることを確認した。
11月の実験では気温が低く、溶けたチョコレートは溶岩流というよりは、溶岩ドームを形成する動きをみせたので、溶かし方を細かく指示する必要があった。しかし、子ども達は親の助けを借りずに熱心に取り組んだ。また、費用は1人400円以内に納まった。実験の後、紙皿に残った材料をカップに入れ、温かい牛乳を注いでココア風ドリンクを作った。そして完成したチョコビスケット火山と一緒に食べたが、食べ残す子どもはいなかった。フードロスを起こさず、満足度の高いスイーツに仕上げることができた。食べながら、箱根ジオパークジオサイト「長尾峠の露頭」の写真と見比べたり、富士山のハザードマップを見せて防災について話したりした。参加者は、小学校低学年~成人まで年齢構成に幅があったが、発達段階に応じて火山噴火の特徴や危険性について楽しく学ぶことができたようで、実験は目的を十分に達成できたと考える。今後、実験実践を繰り返すことで、火山実験としての完成度を高めていく予定である。
本実験で参考としたキッチン火山実験は、身近な材料で火山現象を再現する事が特徴で、子ども達への火山教育としても有用性が高い。「世界一おいしい火山の本」(林,2006)は、子ども向けに楽しく食べられる実験を書いた本として有名である。これらの実験の主題は、科学的な裏付けに基づく火山現象の忠実な再現で、実験後の状態は食欲をそそる食品というより、食材の集合体で、後片付けでは食品の無駄のない回収に注力している。
本実験では上記過程を逆に辿り、完成後に食欲をそそる食品であることからスタートし、火山現象の中で伝える内容(下記下線部)を限定した実験を構築した。火山現象は乱雑さが増大する過程であるので、乱雑さが減少して最終的に1つの食品になることは大きな矛盾であるが、この点については参加者の子どもにわかる範囲で説明をした。しかし、食材を使用する以上、実験後の食品としての完成度は重要であり、食品ロスの観点からも実験後にそのまま食べられる調理実習的な実験もあってしかるべきであると考える。現状、ジオガシキッチン教室(ジオ菓子旅行団)のようなお菓子を完成させることに特化した事例はあるが、火山実験では見当たらない。本実験では、子どもだけでも手軽に安価に食材を集め、楽しく作って食べられる実験を目指した。
【実験:ビスケットのトッピングとして成層火山を作る】火山噴出物を3つの食品で表現し、成層火山を作る実験で、実践講座を2022年 5 月と 11 月に行った。溶岩は湯煎したチョコペン(アとする)、粗粒火砕物(軽石など)は砕いたビスケット(イとする)、細粒火砕物は粉砂糖またはココアパウダー(ウとする)を用いる。火山噴出物には、液体状のものとバラバラになった固体状のものがあること、後者には様々な大きさがあることを伝える。まず始めに、ビスケット(直径4cm程度)を1枚、基盤岩として紙皿に置く。山頂火口での噴火を想定し、アの1本分をビスケットの中央部に絞り出し、冷えて固まる溶岩の挙動として観察させるとともに、ベースとなる山体を作製する。その後、火砕物に見立てたイ、そしてウを積もらせる。さらにア→イ→・・・と交互に降り重ねていくことで火山が噴火で成長する様子を観察させる。火砕物はイのみでも構わないが、層の数を増やす事、味のバリエーションを増やす事を目的に使用した。食べる前に包丁で半分に切断して断面に地層ができていることを観察させる。11月は家庭科を学習していない低学年の小学生も参加し、保護者を含めて19名が実験を行い、実際にできるのか確認した。
【実践結果】 5月の実験では、チョコレートがきれいに広がり、ベースとなる山体を形成した(Fig.1 ①)。ア~ウを順番に積み上げると、頂上からチョコレートが流れやすい方向に流れたり(Fig.1 ④)、頂上に溶岩ドームができたりする現象が観測された(Fig.1 ⑥)。バランスを崩して「山体崩壊」を再現したものもあった(Fig.1 ⑦)。しかし、最終的には全員が独自の美味しそうな成層火山を完成させた(Fig.1⑤)。 断面では、3 種類の層が交互に重なっている様子が観察された(Fig.1⑧)。火山は噴火と共に成長すること、内部に層構造があることを確認した。
11月の実験では気温が低く、溶けたチョコレートは溶岩流というよりは、溶岩ドームを形成する動きをみせたので、溶かし方を細かく指示する必要があった。しかし、子ども達は親の助けを借りずに熱心に取り組んだ。また、費用は1人400円以内に納まった。実験の後、紙皿に残った材料をカップに入れ、温かい牛乳を注いでココア風ドリンクを作った。そして完成したチョコビスケット火山と一緒に食べたが、食べ残す子どもはいなかった。フードロスを起こさず、満足度の高いスイーツに仕上げることができた。食べながら、箱根ジオパークジオサイト「長尾峠の露頭」の写真と見比べたり、富士山のハザードマップを見せて防災について話したりした。参加者は、小学校低学年~成人まで年齢構成に幅があったが、発達段階に応じて火山噴火の特徴や危険性について楽しく学ぶことができたようで、実験は目的を十分に達成できたと考える。今後、実験実践を繰り返すことで、火山実験としての完成度を高めていく予定である。